◆湊斗君ロスの大きな理由

 あるドラマの放送が終わったあと、もしくはその直前にロスが起こるのは、なぜだろう? 

 ロスが起こるドラマには、ある場面で、それもここぞという瞬間に、しかるべき原石のような台詞がごろごろ転がっていることが多いと思う。ドラマは、1クール、約3ヶ月の間、視聴者と毎週特定の時間をともにするのだから、別にそれが毎回特別なパワーワードである必要はない。台詞を話すキャラクターたちのことを日常の延長で身近に、より親しく感じるような一言が、ぼそりと発せられるだけでいい。

 しかもロスが起こるドラマは、メインではない、サブキャラクターの名言集のようになっていると思うのだ。その点、湊斗君は、感情をうまくコントロールしながら、ぼそりとさりげない台詞を響かせてくれた。「ああ」とか「うん」のとても短いフレーズを低い声で響かせる佐倉君に対する明朗な湊斗君の名言がいいコントラストで印象に残る。それがこの湊斗君ロスの大きな理由だと筆者は考えている。

◆さりげなくも揺るぎない名言

© フジテレビ
 湊斗君の胸キュンな名言の数々の中でも、筆者が特に気になったものがある。それは、第5話、紬と湊斗君は別れ、彼女が彼の家に荷物を取りに行った場面。湊斗君に対してまだ気持ちを残している紬が、ソファでパソコンをいじる湊斗君の隣に何気なく座る。自分のことを好きになった瞬間のことを聞かされ、短く笑ったあとに彼は言う。

「自分のこと好きな人、好きになると片思いできないよね。もったいないよね。楽しいのに。片思い」

 湊斗君はさりげなく言い終えて、またパソコンをかたかたはじめる。さりげないけど、揺るぎない。「主成分、優しさ」と紬に評される湊斗君渾身の名言である。紬に「どうする?」と聞かれ、またさりげなく「別れるよ」と言い切る。これまた揺るぎない!