桂木の言葉に無言で立ち去る黒崎だったが、桂木はさらに「なあ。そのあと、お前はどうすんだ?」と問いかけていた。黒崎はそのまま去っていったが、やはり桂木にとって黒崎は特別な存在なのではないか。宝条と対立すれば彼を取り巻く経済界、政界が黙っていないぞと警告していたあたりには、やはり“息子”を諭そうという思いがあったように思える。黒崎の釈放に力を貸したことについて、「俺のためじゃないでしょ。俺が捕まれば俺にネタを売ってる親爺も面倒なことになる」と黒崎は切り捨てていたが、桂木は「そんなことじゃねえよ」と笑い飛ばしながら、しかしその真意については言及しなかった。

 その後に吉川氷柱(黒島結菜)が桂木のもとを訪れた際、「巻き込んで悪かったねぇ。君みたいな子と知り合えば、あいつも足を洗うかと思ったんだけど、ダメだったな」と、どこか寂しそうな表情で話していた。これを聞いていた刑事の桃山哲次(宇野祥平)から、黒崎に足を洗わせたかったのは宝条を喰わせないためでは、と指摘され、もし桂木が黒崎の命を狙うなら自分たちが先に逮捕して命を守ると宣言されると一転、“フィクサー”の顔に戻り、「どうあってももう許されないという状況が、我々の世界にはあるんですよ」と語っていた。桂木の真意は読みづらいが、氷柱に語った言葉には“息子”への想いがにじみ出ていたように思う。だが桂木は、自分が黒崎にとって仇であることもまた、承知している。そんな桂木が“息子”に掛けられる精一杯の言葉が、すべての復讐が終わったら「お前はどうすんだ?」という黒崎の未来への問いかけだったのだろう。

 この第9話で黒崎は、与党・民政党の政治家である蒲生紗千子(秋山菜津子)に献金疑惑をでっち上げることで、蒲生の新党立ち上げを早め、それによって宝条が100億円の資金調達を命じられるという展開を導き、足りない額を海外ファンドから宝条が調達するのではと踏み、黒崎のダミーファンドに見事に誘導。黒崎の罠に宝条も落ちるか……と思われた矢先、急展開が待ち受けていた。

 黒崎は、宝条の汚職を追及しようと何年も調査していた金融庁の日下瑞樹(山田キヌヲ)を味方に引き入れることに成功し、日下のもつ重要な証拠を見せてもらえることになるが、約束どおり日下の家に向かうと、日下は“飛び降り”で救急搬送されるところだった。傍らには日下が護衛用に常に持っていたスタンガンがあり、何者かに突き落とされた可能性が高い。ふと見上げると、そこには早瀬の姿が。はたして桂木のしわざなのか。そしてさらに、黒崎の目の前で氷柱が連れ去られてしまう。一転して黒崎が窮地に立たされたところで第9話は幕を閉じた。

 第9話では“育ての父”との決別だけでなく、氷柱との別れもあった。宝条との対決を前に、氷柱を食事に誘った黒崎。自分が最後の復讐に向かうことをはっきり打ち明けると、氷柱に「帰ってくるまで待ってるよ」と伝えられる。いつもどおりの軽口を叩き合いながら、復讐や詐欺を忘れて「普通の笑顔」で氷柱とのひと時を楽しんだが、黒崎はもう戻れないことを覚悟していただろう。

 はたして黒崎は氷柱を救出し、また「普通の笑顔」を見せることができるだろうか。クロサギの集大成ともいえる壮大なスケールの“宝条潰し”、そして桂木との因縁に決着はつくのか。今夜放送の最終回の結末を見届けたい。

■番組情報
金曜ドラマ『クロサギ
TBS系毎週金曜22時~
出演:平野紫耀、黒島結菜、井之脇海、中村ゆり、宇野祥平、時任勇気、山本耕史、坂東彌十郎、船越英一郎、三浦友和 ほか
原作:黒丸・夏原武(原案)『クロサギ』シリーズ(小学館刊)
脚本:篠﨑絵里子
音楽:木村秀彬
主題歌:King & Prince「ツキヨミ」
プロデューサー:武田梓、那須田淳
演出:田中健太、石井康晴、平野俊一
製作著作:TBS
公式サイト:tbs.co.jp/kurosagi_tbs