良くも悪くも、役者の新たな一面を引き出させる福田雄一の“発掘力”

 福田組の“お家芸”である橋本環奈の変顔ショーは、『午前0時、キスしに来てよ』(19、新城毅彦監督)や『カラダ探し』(22、羽住英一郎監督)にまで飛び火しているものだが、本作でももちろん見られる。予告でもイジり倒されているのだが、劇中ではそれを上回るサプライズも用意されている。

 アイドル路線を進んでいた橋本環奈は、その殻を『銀魂』(17~18)シリーズの鼻ほじり&変顔で破ったからこそ、今の人気と地位を築けているという考え方もあるだろう。

 さらに注目なのは、福田組の作品としては『銀魂』や『斉木楠雄のΨ難』(17)にも出演していながら、本作が初主演作となった吉沢亮だ。

 吉沢は、デビュー間もないドラマ『仮面ライダーフォーゼ』(11)の頃から、ちょっとおっちょこちょいな感じはしないでもなかったが、どちらかといえばクールなイメージのあった彼の、コミカルな部分を引き出したのも福田監督だ。本作で、ついにそのコメディアンぶりが極まったといえる。

 また、吉沢が『青くて痛くて脆い』(20、狩山俊輔監督)や『AWAKE』(20、山田篤宏監督)のように、主人公でありながらもどこか闇があって、オタク気質な役のイメージに合致するようになったのは、先に福田組の作品に出演していたからではないだろうか。なんなら、先日最終回を迎えた吉沢主演のドラマ『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)にもそれを感じた。

 そういった福田雄一の“発掘力”は決して偶然ではなく、もともと『ココリコミラクルタイプ』(フジテレビ系)や『明石家マンション』(同)といったバラエティを多く制作していた頃から、それは健在だった。お笑いタレントではない俳優やアイドルの面白さを引き出すのがもともと上手いのだ。

 “映画”として観てしまうから、どうしても批判が出ててしまうだけで、いったん映画を観るという意識を捨てて、“豪華俳優陣がコントをするバラエティ番組”を観る感覚で臨むのが正解ではないだろうか。

「だったら映画にするな」と思うかもしれない。だからこそ、福田雄一は映画ではないステージで輝かせてもらいたいと強く願うばかりなのだ。

『ブラックナイトパレード』
出演:吉沢 亮、橋本環奈、中川大志、渡邊圭祐、若月佑美、藤井美菜、山田裕貴、佐藤二朗、玉木宏
原作:「ブラックナイトパレード」中村光(集英社「ウルトラジャンプ」「デジタルマーガレット」連載)
脚本・監督:福田雄一
脚本:鎌田哲生
制作プロダクション:CREDEUS
配給:東宝
©2022「ブラックナイトパレード」製作委員会 ©中村光/集英社