そこはかとなく冬を感じさせる曲調や従来の曲を踏襲した様な包括的な展開(要素を一つ挙げればBメロのリズムは過去曲だと「君に叱られた」で使用されたものに近しい)、そしてドラマチックなメロディラインなど、こんだけはみ出し散らかしておきながら、やっぱりちゃんとその楽曲は「乃木坂46」しているのだ。

 久し振りのサイゾーへの寄稿となるおっさん、発表された事もMVその他諸々の解禁も発売日を迎えた事も勿論知ってはいたのだが、実はこの曲をなかなか聴く気分になれなかったのだ。聴いてしまったが最後、此度の事象が現実となると言うそんないたいけでいじらしい(そして気持ち悪い)オタ心が働いてしまっていたのだ。そして実はの実は、執筆当日2022年12月21日、遂に意を決したおっさんは、曲を一回聴いただけの状態で書いている。そして、この判断は恐らく功を奏した。一聴してこの凄みであったが故、これでもし未見のMVや様々なメディア展開などを追ってしまった状態で記事に取り掛かった場合、果たしてまとめ切れたかどうか……。

 此度の事象はこうしていたいけでいじらしくも気持ち悪いおっさんの中に於いても、現実のものとなった。だが、あの曲のアウトロのピアノがサビメロをリフレインする様がずっと、ずっと頭に鳴り響いている。然るにそれは、その間はまだ、曲が終わっていない、曲をスキップ出来ない状態と言う事だ。

「タイパ」と言う新語、即ちトレンドなるものから著しく逆行する行為ではあるが、しばらくはこの力強いリフレインの響きと共に、あの人の卒業までの日々を過ごして行こうとぞ思ふ。