◆専門用語は平易な言い換えではなく、あえてそのまま
――読み始めると、画力の高さとともに、構成力、物語の力にぐいぐい引っ張られます。描き進めるうえで、「読ませること」へどんな意識を配りましたか?
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――なるほど。確かにそうですね。編集部との話し合いのなかで、変更していった部分はありますか?
ひるなま「編集さんは、“わかりやすさと専門性”のバランスを適切に見てくださる方で、『わかりにくい部分』『注釈がほしい部分』などを指摘してもらいました。その反面、キャラクターの造形や全体の構成などは、ほとんど私の好きにさせてもらえたので、大きな変更は特になかったと思います」
◆虐待の話は二度三度とネームを練り直した
――執筆していくうえで、最も描きやすかったくだりと、最も時間がかかったエピソードを教えてください。
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でも結果、生々しさを削ぎ淡々とした表現に留めてよかったです。あれは本当に、私の一番描きたいテーマを編集さんが理解し、誠実に原稿を見て下さったおかげだと、あとから痛切に感謝しました」
――漫画を描いて世に出すのだという思いは、入院中、それ以後も大きな力になりましたか?
ひるなま「そうですね。入院中はほぼずっと痛みとの闘いでして、特に術後の全く身動きが取れず虚空を見つめているしかない日などは、動かせるのが脳だけなので日がな一日『なぜ私がこんな目に』とネガティブな思考が頭を駆け巡ってしまって……。そんな時は『転んでもタダでは起きるものか!』という思いだけが、すがれるものでした」