9組目はCブロックのトップバッター。職人気質なピン芸人「河邑ミク」。
自らを「清純派芸人」と称しており、下ネタはNGらしい。男でも女性でも下ネタを使う芸人が多い中、NGと公言しているのはかなり好印象。ネタを見た印象は、ご自身のキャラクターを客観的に理解していて、ネタの振り、見栄え、キャラの活かし方、笑わせ方がほぼパーフェクトだった。
ただ残念なことに河邑さんのように整っている見た目は、お笑い的にどうしても不利になってしまう。同じようなことをしても、もう少し見た目にインパクトがある人がやったほうが笑いが大きかったり、よりボケているように見えたりする。正直なところこれはどうしようもない。
なので今のままネタを作り続け、いつか河邑ミクさんにしか出来ないネタの最高作を見つけ出すしかない。気が遠くなる作業だが、これだけのネタを作れるのだから必ず見つけられるはずだ。今まで数々の女性芸人が諦めた道を極めて欲しいと思う。
10組目はネタ以外でもバラエティ番組で活躍している人気芸人「エルフ」。
とても不思議なネタのシステムで、セリフの言い方や形式などから一見するとつたないネタに見えてしまうが、荒川さんのキャラクターを活かして、同時にはるさんもボケに見える良いシステムだ。
ただこの形式だと、荒川さんのセリフのハードルが上がってしまい、そのハードルを越えるのはかなり難しい。さらに説明する為のセリフが多いのでボケとボケの間隔が広がってしまい、お客さんのテンションを維持できないのでどうしても笑いが小さくなってしまう。
ギャルというキャラクターなので、浜崎あゆみさんの曲を盛り込みたかったのだと思うが、盛り込み方がしんみりするようなストーリー展開を選択してしまったので、余計に笑いが起きづらくなってしまった。荒川さんには終始バカを演じて幸せを振り撒いている、いつもの姿の方が求められていたのかもしれない。
11組目は決勝進出は4度目だが、いまだに無冠のコンビ「紅しょうが」。
その実力は折り紙付きで、今回もファイナルステージへ進出することは出来たが、残念ながら優勝は逃してしまった。漫才もコントもこなす紅しょうがさんだが、ファーストステージはコントを選択。とても勢いがあるコントで、その勢いのまま勝ち上がった印象。ネタは少し設定が入り組んでいる気がした。
さらに稲田さんのツッコミが漫才のように誘い笑いをしてしまったので、コントとしてはクオリティが下がってしまう。これだけちゃんとしたコントなので、もっと役に入り込んでも良かったと思う。
ファイナルステージはお決まりの衣装に身を包み、紅しょうがの真骨頂の漫才を披露した。冒頭は静かな立ち上がりになってしまい、少しスピードに乗るのが遅かったような気がする。さらに前半が箇条書きのようなボケになっていたので、笑いが1ボケ、1ボケで落ち着いてしまい、連続して笑いが起きる後半になるまでが少し盛り上がりに欠けた。パワーで押す形式はいつも通りなのだが、いつもより強引なボケが多く見られ、ツッコミもボケツッコミのような形になっていたので「紅しょうが」さん本来の、良さは出ていなかったように思う。
お二人が器用過ぎて、お互いがボケとツッコミの両方をするのだがキャラクター的にツッコミはツッコミだけ、ボケはボケだけをするという形をとったほうが良い。そうすれば振り切った漫才になり、他を圧倒するだろう。
12組目、ファーストステージ最後の組は唯一のフリー芸人「にぼしいわし」。
どこの事務所にも属さず、大阪で活躍する”地下芸人”。所属事務所が無いということは客観視する人がいないので、ネタを成長させるのが本当に難しい。そんな状況下で決勝進出を果たしたのは本当に凄い事だ。
ただやはり、ネタを客観的に見えていない弊害が随所に見えた。例えば本題に入る前にボケのにぼしさんがキャラに合っていない相槌をしたり、ツッコミのいわしさんがせっかく笑いが起きているのに若干、長めにつっこんでしまったりといった具合。本来、客観視してくれる人がいれば削ったり、修正したり出来る部分なのだが、それが出来ないのでどうしてもネタに影響が出てきてしまう。
もし彼女たちに第三の脳みそがあればもっと良いネタになり上位に食い込めるのではないだろうか。フリーのメリットデメリットが垣間見えた瞬間だった。