『天使にラブ・ソングを2』ローリン・ヒルの圧倒的な歌唱力に!

 中盤からデロリスは音楽クラスの生徒らを、カリフォルニアで行われる聖歌隊コンテストに出場させるべく奔走する。聖歌隊には白人のメンバーもいるが、主役級の活躍をするのは黒人俳優たちだ。ずば抜けた歌唱力を持ち、歌手になりたいという夢を持ちながら、夢半ばで死んだ夫を持つ母親から「不相応な夢など見ないで勉強しろ」と言われている少女リタを演じるのは後にグラミー賞歌手となるローリン・ヒル。

 白人から黒人文化の優位性を取り戻そうとしているが、誰も相手にしてくれない残念な少年、ジェームズを演じるのは後に、制作に関わったウィル・スミスのアルバムが1000万枚以上のヒットを記録するライアン・トビー。ライアンは聖歌隊の中でとびっきりのホイッスル・ボイスを響かせ周囲を驚かせるが、現場で突然やったアドリブだったとも言われている。

 夢や希望も持てない学校で、将来の進路に思い悩む生徒らが熱血(?)教師の指導によってひとつにまとまり、コンテスト優勝を目指し、人間として大きく成長する、王道のビルドゥングスロマンとなった本作は、大ヒットした名作である前作と比べ、本国では評価が低く、興行収入も前作の半分以下という結果に終わってしまった。

 サスペンスコメディだった前作は正体を隠して修道院で生活しているデロリスの正体がいつバレるか、といった展開が面白く、ひねりもある。今回はそういった作風のひねりもなく、物語の展開もありきたりで、数々の問題の解決方法も安易だし、結末はあまりにもベタすぎる。

 日本の公開当時も一作目よりは数字が落ちているのだが、「好きなのは2の方」という人が多い。一作目とほぼ同様の人気を今も誇っており、後に日本で起こるゴスペルブームの火付け役とも言われているのだ。

 その理由は劇中の楽曲だ。『2』は『1』に比べて、王道の楽曲が使われている。「オー・ハッピー・デイ」は特に人気の曲で、日本でゴスペルといえば大体この曲。「ジョイフルジョイフル」もそう。日本で誰もが知っている、歌える楽曲は『2』の方が多いので本国とは違う評価をされているのだろう。

 民放の放送ではカットされがちなエンドロールで、キャストが登場する際に使われている「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」は、ソウル界最高のデュエット、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルによるもの。「どんなに山が高くても、どれほど谷底が深くても、たとえどんなに川幅が広くても、二人を妨げることはできない」という恋人同士の愛を綴った歌だが、どんな障害があっても黒人の少年少女たちが夢を見ることや将来を諦めさせることはできないんだ、というメッセージにも聞こえる。

 これが不変のメッセージとなって伝わっているからこそ、30年経った今、続編を作ろうということになったと思える。「どんなに山が高くても、どれほど谷底が深くても、たとえどんなに川幅が広くても」続編を作ることの障害にはならない。


提供・日刊サイゾー

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