今、日本の家族を追い詰めているものとは何なのか。離婚、両親との絶縁を経て、長年連れ添ったパートナーと事実婚で子育てをする「女性装する東大教授」安冨歩氏、家族をテーマに取材を重ねてきたノンフィクション作家の大塚玲子氏が新しい家族の在り方について特別対談を行った。

◆「こうあるべし」という形にとらわれすぎ

ルポ[新しい家族]の肖像
※画像はイメージです
安冨:まず言えるのは、多くの人が形骸化した従来の「家」に疲れている。古い日本では家はひとつの“経営体”。夫婦、子供、祖父母、親戚や家来まで多くの人がメンバーだった。やがて明治の近代化で家父長制の家制度がつくられ、戦後に廃止されたものの、いまだ慣習や意識が根強く、多くの矛盾をきたしています。

大塚:みんな「家や家族はこうあるべし」という“形”ばかり見すぎてる。だからこそ、そこから外れた人も苦しみ、形に合わせている人もがんじがらめになっています。

◆「家」という幻想に、みんなしがみついている

安冨:徴兵制や、高度成長によって崩壊した「家」という幻想に、みんなしがみついている。だから「結婚=我慢」と思い込み生活する人が多い。特に女性は雇用や賃金格差もあり、条件のいい相手と結婚しないと生きづらい。結果、体裁を保ち、家を支えるため、ガス抜き不倫に走る人も日本では多い。アメリカだとイヤならすぐ離婚しちゃいます。

大塚:結婚したら夫婦は同じ姓を名乗り、SEXも子育ても夫婦で行わなければならない。あまりに多くの営みが婚姻にパッケージされている。婚姻と同居を切り離す別居婚や、婚姻とSEXも切り離す一夫多妻・一妻多夫も合意のうえならそれでいい。バラ売りできたらもっといいのに。