◆現行法のもとでは諦めざるを得ないようなケースも
実際、法整備に不備のある事実婚や同性婚ゆえに、不測のトラブルに陥るケースもあるという。
「関係解消のとき、どちらかの名義で購入したマンションをどうするかや、遺言や養子縁組もないままパートナーと死別した場合の財産承継についての相談、死別したパートナーの法定相続人や親族から中傷を受けたなどの相談が多いです。
また、遺言を準備して死別した場合でも、相続税が婚姻した夫婦に比べてとても高くなるなど現行法のもとでは諦めざるを得ないようなケースもあります」
◆トラブルを未然に防ぐ方法を弁護士が解説
それらのトラブルをなるべく防ぐには、どんな手続きがあるのか。
「元気なうちにカップル間で任意後見契約や遺言書を作成する、養子縁組をして法定相続人となるようにしておくなど、自分たちの生活のなかで、できる限りの準備をするしかないのが現状です」(南氏)
アメリカやフランスなど同性婚を法的に認める国が広がるなかでも、日本の合法化への道は険しい。
「社会の雰囲気や民間企業のサービス面は徐々に整いつつあるとは思います。今後は婚姻制度という法律の不平等に、多くの関心が向けられるかが大きな課題ですね」
家族の形の多様化が進むなか、国が積極的に法制度を整えることが何よりも肝要だ。
【弁護士・南 和行氏】
’76年、大阪府生まれ。’13年にパートナーの吉田昌史氏とともに「なんもり法律事務所」を開設。LGBTや同性婚についての講演活動も行っている
<取材・文/週刊SPA!編集部>