エキノコックスという寄生虫の終宿主はキツネや犬で、感染動物は虫卵を糞便に排泄する。この糞便中の虫卵が環境中にばらまかれ、その虫卵を口にした動物が中間宿主であれば、その体内で幼虫へと成長するのだ。

この場合、回虫と決定的にちがうのは、キツネや犬が虫卵を食べても全く感染は成立しない。何事も起きないということ。
野ネズミなどの中間宿主の体内でのみ幼虫へと成長し、肝臓に寄生し、肝臓を破壊しながら増殖を続け、じわじわとしかし確実に中間宿主を弱らせる。そして、終宿主である犬やキツネに捕食してくださいと言わんばかりの状況を作り出す。
そんな状況の野ネズミを終宿主が捕食すると幼虫は腸内で成虫となり、再び虫卵を排泄し始める。この場合の犬やキツネはほとんど症状が無く、元気に生活し、広い範囲にたくさんの虫卵をばら撒いて回る営業マン的役目を担っている。

獣医師さんのひとくちコラム 「中間宿主と待機宿主」の話
(画像=『犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)』より引用)

食物連鎖の中で、こんな風に回虫やエキノコックスは連鎖の仕組みに便乗し、累々と滅びずに子孫を残し続けている。なぜこの2つの寄生虫の話だったかはお気づきの方も多いはず。

人は生物学的には、犬回虫の待機宿主、エキノコックスの中間宿主だからに他ならない。文明の進化とともに食物連鎖のループからはずれ、人が捕食される側だからという理屈は通用しなくなっても、太古の時代からの生物学的関係はおいそれとは崩れない。
ならば、多くの種を絶滅に追いやり、莫大な絶滅危惧種を生み出している人類が、自らの悲惨な寄生虫疾患を克服できないはずは無い。寄生虫を絶滅に追い込んでも、それを非難する保護団体はないだろう。

ヒトの犬や猫回虫症は内臓移行型や眼内移行型などいくつかの悲惨な症状を呈する。ヒトのエキノコックス症は10年以上もの期間をかけて肝臓を破壊し死を免れない。そして、これらの寄生虫病は家族の一員である動物たちから感染するかもしれないのだ。

動物たちにはほとんど症状がなく、何の悪気も無い。さらに言えば、終宿主に寄生する寄生虫はいとも簡単に駆虫薬で退治できる。待機宿主や中間宿主に寄生する幼虫に有効な薬剤は今のところ見つかっていない。これらの状況を総合すれば動物たちが寄生虫に感染すれば即座に駆虫すればよいという結論に誰しもが到達する。

ならば定期的に検便をすればよいのかというと、虫卵の排泄時期にドンピシャの検便がいつもできるとは限らない。定期的に駆虫薬を投与するという方法のほうがはるかに優れているというのが現実なのだ。

いまは原虫を除くほとんどの寄生虫を1剤で確実に駆虫できるようになっており、飲み薬の苦手な猫には背中に滴下するスポットタイプの駆虫薬も利用可能だ。
1年に数回の駆虫薬投与で安心できるのなら、何をためらうことがあるのだろうか。

先進国中で駆虫薬使用量がぶっちぎりで最下位といわれる日本。定期的な駆虫薬の投与こそ、動物たちを悪者にしない唯一の方法と言えるだろう。


提供・犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)

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