◆過去の名作を意識した演出も。大人世代が感じるなつかしさ

――高野さんは『いつ恋」にも参加されていました。

「『いつ恋』で人気のエピソードであるレシートの回(※第7話。遠く離れて暮らしていた祖父が亡くなり、残されたレシートを見て祖父の生活を想像する)の演出を担当しています。あの回は坂元裕二さんと僕と高野監督とで悩みながら作った回でした。

 高野監督も風間監督に負けず劣らずハートがあって人の心を丁寧に描くうえ、西谷弘監督の下で『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系、2014年)なども担当しているから、ケレン味のある演出もできるんです。風間監督が連ドラにおいては新人なので、連ドラに慣れていてかつセンスが良くてしかも丁寧に人の心を描く“ちょっと先輩”にいてほしくてお願いしました」

ドラマ『silent』第6話より
ドラマ『silent』第6話より
「このドラマが若いかたのみならず、大人の鑑賞に耐え得るものになっているわけは、昔のヒットドラマの方法論も生かしながら、若い世代の感性を取り入れることでアップデートしているからだと思います。

 たぶん、上の世代が見るとなつかしいと思うところもあると思うんですよ。主題歌のかけ方も過去の名作を少し意識していて(笑)。ちょっと年齢の上の僕の感覚で作った仕掛けを、生方さんや風間監督が若い感性で紡いでくれる。この組み合わせは最強だと思います」

――省略しないで丁寧に作っている熱量が視聴者に伝わっているのでしょうね。

「ちゃんとつくればちゃんと届くことを実感して嬉しく思っています」

――さて、後半戦はどうなるのでしょうか。

「これまで、紬と想のラブストーリーを描きつつ、二人と絡む存在として、まず湊斗、そして次に奈々を描きました。第8話では春尾(風間俊介)の物語を描きます。彼らひとりひとりが折り重なって物語が紡がれていくなかで、もうひとり、重要な人物が想の母・律子(篠原涼子)です」

ドラマ『silent』第2話より
ドラマ『silent』第2話より
「当初から縦軸が紬と想、横軸が親子の物語と謳ってきましたので、その横軸も交えて、いよいよクライマックスへと向かっていきます。自分で言いますが盛り上がっていきます!

 若いかたのみならず、大人の鑑賞にも耐え得るラブストーリーが、『silent』ならではのゴールに向かっていきますので、ぜひ最終回までお楽しみいただければと思います」

●木曜劇場『silent』公式サイト、●木曜劇場『silent』公式Twitter :@silent_fujitv

<文/木俣冬>

【木俣 冬】

フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami