◆人生って悪者はいないですからね
――2017年に刊行された『酔うと化け物になる父がつらい』で、タイトル通りお父さんをめぐって、ご自身のご家族を描いていますが、その第1話のラストでお母さんが亡くなり、非常に衝撃的でした。今回はそのお母さんやご自身のことについて描かれています。
菊池:『酔うと化け物…』の時は、「お母さん可哀想ですね」という意見が多かった。でも、今回この本を出したことによって、「そりゃお父さん飲むよね」と、イメージが反転した人もいるんじゃないかなと思っています。
でも人生って悪者はいないですからね。どちらが悪いとかじゃなくて、どの視点から見るかっていうだけで。
――ご自身の家庭について、描きたくないなと思うこともあったと思います。そういう時、どうやって乗り越えたのでしょうか。
菊池:たぶん私が描きたくないって思うことは、きっと皆さんが読みたいと思うところだろうと思って描きました。
◆忖度せずに描いたのに途中から忖度してくださいと言われてしまった
――『「神様」のいる家で育ちました』第5話を発表後、連載中にも関わらず、公開終了となりました。あとがきに描かれていましたが、編集部から宗教ではなく毒親の話として描くのはどうかと打診された時に、「みなさんが伝えたいのはそんなことじゃない」とハッキリ断ったのは、非常に勇気のあることだと思いました。
菊池:忖度(そんたく)せずに描いたのに、途中から忖度してくださいと言われてしまったので、それだと意味がないなと思って。今まで世間がしてきたことを変えていきましょうって担当さんが言ってくれたのがそもそものスタートだったのに、結局同じことをしましょうってことになってしまったので、それは飲めませんと言って、連載のお断りをしました。
――公開終了となった時は、SNSで大きな話題となりました。いろんな反響があったと思いますが、どんな声に励まされましたか?
菊池:当事者の人はわかってくれるだろうという気持ちで描いていたんだけれども、宗教2世じゃない人たちから、「せっかく知る機会をもらったのに、途中で終っちゃうのはひどい」という声をいただいたのは、嬉しかったですね。
――内容もですが、この本が生まれるまでの過程も波瀾万丈ですね。
菊池:宗教2世がどういう目に遭ってきたかを、この本を出す過程がもう1回再現しているなっていう感じがあって。まさしく追体験というか。クレームが来た時も、こっちもアドレナリン出てるから、そんなにショボンとはならなくて。来たか!みたいな(笑)。