◆宗教2世の共通点「自分で選んだことじゃない生き方を強要されるつらさ」

――トークイベントがこの漫画を描くきっかけになったとのことですが、具体的にどんなイベントだったのでしょう?

菊池真理子(以下、菊池):以前に描いた『毒親サバイバル』で取材した詩人の成宮アイコさんと一緒に主催したイベントで、今回の新刊の第一話に出ている詩人のiidabiiさんや、評論家の真鍋厚さんなど、宗教2世の人たちが自由に話せるイベントでした。配信のイベントだったんですが、たくさんのコメントをいただきました。それを見た編集者から「漫画にしませんか?」と声がかかったのがきっかけです。

菊池真理子さん
菊池真理子さん
――『毒親サバイバル』では、毒親を持つ人たちを取材されていましたが、新刊『「神様」のいる家で育ちました』は家族だけでなく、さらに宗教というかなりデリケートな部分にも踏み込んでいます。宗教2世の方々を取材してみて、印象に残ったエピソードはありましたか。

菊池:かなり回復している人や、まだ回復途中の人など濃淡はあるんですが、それはいろんな要因があってのただの結果論であって、その前段階として「自分で選んだことじゃない生き方を強要されるつらさ」が彼らの共通点としてあるということが、強く印象に残っています。

――作品に登場する宗教2世の人たちは、物心ついた時から、四六時中「○○しないと神や親に見離される」と脅されたり、あるいはその恐怖を常に抱いていて、非常に過酷な環境だと思いました。第一話では「背中にナイフを突き付けられてるような日々」だと表現されていましたね。

菊池:「ナイフ」と言ったのは、iidabiiさんでした。彼がトークイベントの中でおっしゃっていて印象的だったのは、1世の人、つまり自分で選んで信仰した人が、「(教義によっていろんな制約を課せられるので)ピーンと張り詰めた糸みたいな人生」だと表現したんですって。そして、そこから脱会した時に「糸がぷつんと切られたようだ」と。

iidabiiさんはそれを聞いたときに、2世は糸どころじゃなくて、何かに後ろからナイフを突きつけられていると感じたそうです。