◆紬の“青い服”は同じ服を着まわす生活感。細部でもリアリティーを追求
――ブルーを基調にした画面が注目されています。
「“北野ブルー”になぞらえて……などと言うのはおこがましいとは思いながら“風間ブルー”と呼んでいて(笑)。まず、紬のカラーを青に決めたのですが、ところどころに使用されているシアンは風間監督の世界ですよね。
青といえば、紬が印象に残る青い服をよく着ていることを指摘されるのですが、これは色にこだわっているわけではなくて、同じ服を着ているというリアリティーなんです。ドラマではたいてい毎週、毎場面、おしゃれな服をとっかえひっかえ着ていますが、実際にはそんな人はなかなかいないですよね。やはり、自分の好きな服は何回でも着るし、少ない服を1週間で着回す。視聴者の方々と同じく地に足のついた生活をしている紬を描いています」
――ロケ場所の距離感もリアルでふつうに移動できるような設定になっています。作品によっては撮影優先で実際は移動が難しいこともありますが、無理なく移動できるロケ地なのでドラマの世界を体感できます。
「僕が以前プロデュースした恋愛ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(以下『いつ恋』フジテレビ系、2016年放送)で雪が谷大塚を舞台にした際に聖地巡礼する視聴者がたくさんいまして、いまだにファンがロケ地を訪ねてくれています。そこに行くと、登場人物がいるような気がすると皆さん、言ってくれるんです。
僕も『北の国から』(フジテレビ系、1981年)が好きで富良野に行きましたからね。そういう楽しみも含めてドラマの良さだと思っているので『silent』でも世田谷代田から渋谷までリアルに通える流れを意識してロケ地を選びました。それも風間監督のセンスでいい感じに撮ってくれています。そういえば、『いつ恋』も登場人物が同じコートをよく着ていました。裕福ではなく、都会の片隅でひたむきに生きていると感じさせる人物を描くことで、とくに若い視聴者のかたに共感していただけているように思います」
●木曜劇場『silent』公式サイト、●木曜劇場『silent』公式Twitter :@silent_fujitv
<文/木俣冬>
【木俣 冬】
フリーライター。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』など著書多数、蜷川幸雄『身体的物語論』の企画構成など。Twitter:@kamitonami