◆不意に終わったセクハラの意外な結末
佳苗さんは週2日は外回りをしており、同行するのはT課長。1日中、T課長とすごすのは「地獄のような時間だった」と振り返ります。
「タクシーの車内や取引先との打ち合わせ中など2人並んで座る場合は、必ずといっていいほど身体をやたら密着させてくるんです。隙を見せると脚を触られそうな気がしたので、いつもバッグを膝の上に置いてガードしていました」
ですが、そんな上司との攻防は、不意に終わりを告げることになります。ある日、通勤中の電車内でT課長が痴漢をして捕まってしまったのです!
「それ以上の事をやってもおかしくはなかったので、驚きはまったくありませんでした。むしろ、『社内で盗撮をしてたのでは?』という声があがり、女子トイレや更衣室などを徹底的に調べました。
結局、カメラなどは見つかりませんでしたが、外部の業者を使って調査したので社内ではちょっとした騒動になっていました」
◆課長が迎えた自業自得の末路
結局T課長は、佳苗さんをはじめ複数の女性社員がセクハラ被害を会社に訴えたため、さすがに上層部も処分を決断。解雇こそ免れましたが社内で“墓場”と呼ばれている東北の某営業所へ異動。事実上の懲罰人事でした。
「これを機に会社がセクハラ対策にようやく重い腰を上げ、男性社員対象の社内セミナーなども急きょ実施されました。おかげで少しは働きやすい環境になったとはいえ、まだまだセクハラへの理解が足りない社員が多いですけどね。入社1年目からいろいろな事が起こりすぎて、とにかく精神的な意味で疲れました」
今年こそは彼女にとって、いい年になることを祈るばかりです。
―私達の身近な「セクハラ」―
<TEXT/トシタカマサ イラスト/鈴木詩子>
【トシタカマサ】
一般男女のスカッと話やトンデモエピソードが大好物で、日夜収集に励んでいる。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。