インターネットのある生活が当たり前のものとなり、多くの時間を「動画」や「ゲーム」などのエンターテインメントで楽しんでいる人も多いでしょう。それらを運営する企業は業界内のシェア競争の枠を超えて、“消費者の時間をどれだけ得られるか”という視点にシフトしているようです。この記事では、私たちの自由時間を盛り上げる新しいエンタメを紐解いていきます。

エンターテインメント業界の勝者は誰か?

有料会員が2億人に迫る動画配信サービス「Netflix」は2018年度第4四半期の業績発表で、投資家に向けてこう述べました。

We compete with (and lose to) Fortnite more than HBO.
= われわれが戦っているのは、HBO(衛星/ケーブルテレビなど)ではなく「Fortnite (フォートナイト)」である(そして負けている)。

ちょうど、四半期決算にて市場予想を下回る見通しとなった時のコメントです。彼らは、従来のビデオ配信事業者ではなく大人気マルチプレイゲームの「Fortnite(以下、フォートナイト)」がNetflixの脅威であるという見解を示したのです。この発言は、アメリカをはじめ日本でも話題となりました。

動画配信サービス大手を筆頭に、業界内のシェア競争という通念が取り払われ、消費者が持つ可処分時間(日常において生活にかかる時間を除いた、自分の意思で自由に使える時間)を、テレビやゲームなどのエンターテインメントサービス業界全体で奪い合うという、新たな局面に入ったことを示唆したからです。

消費者は自由時間をどうやって過ごしている?

企業の見解や動向が変化する一方で、消費者である私たちは実際にどのような行動をとっているのでしょうか。私たちの生活に欠かせないツールとなったスマートフォンの利用をベースに、その傾向を見ていきましょう。

視聴行動分析サービスを提供するニールセン デジタル株式会社の視聴率情報データによると、2019年12月の日本におけるスマホ利用時間は1日あたり平均で3時間46分、このうちWebブラウザを利用している時間はわずか8%で、残り92%はアプリが占める結果となりました(対象は18歳以上の男女)。

さらに同データから、18~34歳の人たちが月に1回以上利用しているアプリをジャンル別に見てみると、次のような結果となり、エンタメ系のアプリが最も多く使われていることがわかります。

  • エンターテインメント 7.5個
  • Eコマース 4.3個
  • ファイナンス 2.6個
  • 家族とライフスタイル 2.8個
  • 効率化/ツール 4.5個
    (スマートフォンにあらかじめインストールされているアプリは含まない) エンタメといってもその種類はさまざまですが、移動などの隙間時間でなく、休日や寝る前の時間など“長時間利用して楽しめる”=可処分時間を多く占めるサービスは、大きく2つに分類することができるでしょう。

    1.動画配信サービス

    「Netflix」をはじめ、「Amazonプライム・ビデオ」「Hulu」「Disney DELUXE」など、インターネット上で映画やテレビ番組などを配信するサービスは、ここ数年でサービスの拡大・成長を続けています。

    特に、毎月の利用料を支払うことで、見たい作品を好きなだけ楽しめる定額制動画配信サービス(SVOD)が主流となっており、見切れないほどのコンテンツ量は利用者が動画視聴に多くの時間をかける要因と言えるでしょう。

    オリジナル作品に力を入れるNetflix

    なかでもNetflixはオリジナル作品を目玉にしており、Netflixでしか見られない映画やドラマ、ドキュメンタリーを多く配信。人気を集めています。

    オリジナル作品を配信するサービスは他にもありますが、“配信サービス”の枠を超えた映像製作へのこだわりが他社との差をつけているようです。

    例えば、実力派デヴィッド・フィンチャー監督と俳優ケヴィン・スペイシーが手を結んだ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」は、ネット配信のドラマシリーズとして史上初めて「プライムタイム・エミー賞」の3部門(監督、脚本、キャスティング)を受賞するなど、他の作品でも多くの評価を得ています。

    ただし冒頭で取り上げたように、Netflixは同業他社をライバルとして見てはいないでしょう。業界内で会員獲得競争をするのではなく、いかに消費者の可処分時間を得るのかという点に着目しているのです。

    そういった意味での強力なライバルとなり得るのが、フォートナイトなどのネットワークゲームと言えます。