日本が、これからさらに高齢化を辿るのは周知の通りです。介護業界にとっては追い風といえるような状況ですが、いま介護の未来に暗雲が立ち込め始めています。

介護事業の倒産が急増し、将来的に日本で「介護難民」が溢れかえる可能性が出てきました。

2025年、介護需要が爆発的に増加?

介護難民は一般的に、「介護が必要な人であるのに、十分な介護を受けられない人」のことです。以下の2点の理由から、近い将来に介護難民が増えると考えられています。

  1. 介護が必要な人の増加(2025年問題)
    2025年には団塊世代が75歳を超え、介護サービスの需要が一気に高まると考えられます。この世代は人数が多いため、需要に対して供給が追い付かないのではないかと懸念されています。

  2. 介護業界の倒産
    現在、介護業界では倒産が相次いでいます。東京商工リサーチの調べによると、2022年1〜9月の期間で前年と比較した結果、「老人福祉・介護事業」の倒産は51件から100件へとほぼ2倍に増えています。

介護関連の倒産件数が増えている理由は、人手不足や競争の激化が大きいからとされています。またコロナ禍で高齢者が利用を控えていることも、企業の業績悪化につながっていると考えられています。

どのような対応策が必要か?

介護難民が増えていく状況は、日本の未来にとって不安要素であることはいうまでもありません。では、この問題にどう対処すべきなのでしょうか。2つの視点からアプローチを考えてみましょう。

まずは「人手不足」にどう対応するかです。介護業界で人手不足が起きている理由としては、新たにこの業界で働こうという若者が増えていないこと、従業員が高齢化していること、などがあります。

従業員の高齢化は止められませんが、新たに介護業界で働こうという若者を増やしていくことは可能です。ITなどの導入や福利厚生の充実化、賃金問題などを含め、若者が働きやすい環境を整えるために国が介護事業への支援を手厚くするなど、助成事業などを強化することが1つの方法として考えられるのではないでしょうか。

もう1つは「介護報酬」を高くすることです。介護報酬は施設の売上に直結しますが、これまでのマイナス改定で、施設の経営は悪化しつつあります。介護報酬の多くは介護保険から支払われるだけに税負担が大きくなりますが、介護難民問題に対処するためには国は介護への財源を確保するべきでしょう。

これからの政府の舵取りが注目されます。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆中。

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