◆国民の妹・イ・ジウン(IU)は、独自の「話法」を持っている

イ・ジウン/IU
国民の妹ことイ・ジウン/IUが、時間を失くした女という役柄で登場する。
――作品を拝見して、ヨン・ウジンさんとキム・ジョングァン監督は、とても相性がいいなと思いました。是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』にも出演し、日本でも大人気のイ・ジウン(IU)さんが、ヨン・ウジンさん演じるチャンソクの話相手として登場します。彼女を起用する経緯を、監督にお聞きしたいです。

キム・ジョングァン監督:この映画を撮る前に、Netflixのドラマ「ペルソナ ―仮面の下の素顔―」(エピソード4「夜の散歩」)でご一緒したんですが、その時の撮影が凄く楽しかったんですね。僕が思うに、彼女には独特の“話法”というものがあって、それがとてもユニークなんです。スター性があって、俳優としても、アーティストとしても素晴らしい能力を持っていますが、それに加えて誰にも真似できない彼女独自の個性がある。本作は低予算で実験的な映画ですが、彼女は「新しい何かに挑戦できるチャンス」と捉えてくれたようで、出演を快諾してくれました。そのことについては、とても感謝しています。

※追記:「あくびをしているイ・ジウン(IU)の顔がチャーミングだ」と伝えたら、キム・ジョングァン監督が「そうそう!」と言わんばかりにサムズアップ(親指を立てるジェスチャー)して共感していた。

◆日本で開催されたファン・ミーティング ”早朝の東京の街を楽しんだ”

映画『夜明けの詩』本編より
――ヨン・ウジンさんは、8月に日本で行われたファン・ミーティングに参加されたそうですが、反応はいかがでしたか?

ヨン・ウジン:まだまだコロナ禍の厳しい状況だったんですが、たくさんの方が会いに来てくださって、僕自身とても嬉しかったです。皆さんと楽しくコミュニケーションをとらせていただいたんですが、その中で、一人お年を召した女性がいらっしゃって、凄く感動されて泣いておられたんです。その姿を見たとき、こういう方々のためにも、これからもっともっと自分は頑張らなきゃいけないと感じました。そしてもっともっといい作品に出演して、皆さんと幸せを共有したいと、心からそう思いました。

――コロナ禍ではありましたが、少しは日本を満喫できましたか?

ヨン・ウジン:コロナ禍もそうですが、非常にタイトなスケジュールだったので、今回はそれほど観光する時間はありませんでした。その代わりといってはなんですが、朝食前に、ホテルから銀座までウォーキングしたり、公園で瞑想したり、まだお客さんの少ないスターバックスに入ってコーヒーを飲んだりと、早朝の東京の街を楽しみました。個人的にはとても充実した幸せな時間を過ごせました。

――お二人にとって、日本映画はどんな印象ですか? また、好きな作品、監督、俳優なども教えていただければ。

キム・ジョングァン監督:私が最もリスペクトしているのは、成瀬巳喜男監督ですね。あとは小説家になりますが、夏目漱石と松本清張。最近の作品でしたら、寺島しのぶさんが主演された『オー・ルーシー!』や連続ドラマの「重版出来!」が面白かったです。日本の映画・ドラマにはとても関心があって、『ジョゼと虎と魚たち』をリメイクしたのも、その思いが高じたからなんです。凄く影響を受けていると思いますね。

ヨン・ウジン:少し前に濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』を劇場で観たんですが、一人大泣きしてしまいした。最近ではこれがベストムービーですね。キム・ジョングァン監督と同じように、僕も以前から日本の映画やドラマに関心を持っていて、たくさん観させていただいているんですが、一番の特徴は、「感情を強要しない」というところですかね。余韻を残しておいて、「自ら湧き起った感情を楽しむ」という作品が多いように思います。これは素晴らしいことですよね。チャンスがあれば、僕も日本の映画やドラマに出演してみたいです。