人とのコミュニケーションにおいて“話し方”は重要な要素。だからこそ話し方を改善すれば、一気に好感度アップにつながるはず。今回はテレビ朝日のアナウンススクール「テレビ朝日アスク」の講師で元アナウンサーの川瀬眞由美さんに“好感を与える話し方”について伺いました。
話すのが苦手な人が陥りやすい落とし穴とは?
「テレビ朝日アスク」には、アナウンサー志望者以外にも「日常で話すのが上手くなりたい」と希望する人向けの“話し方教室”が開かれており、発声方法はもちろん、会話の構成や世間話のコツなども指導しています。一体、どんな人たちがこの教室を受講するのでしょうか?
川瀬眞由美さん(以下、川瀬さん):営業に配属された方や、上司に「話し方がわかりにくい」と指摘されてしまった方など、「話し方を改善して、ビジネスシーンに生かしたい」と希望する受講生はかなり多いです。お若い方以外にも「役職がついてスピーチする機会が増えたので話し方を見直したい」という年配の方もいます。
話すのが苦手な人がビジネスシーンではまりがちな落とし穴として、川瀬さんは「過剰な敬語」と「わざわざ難しい言葉に言い換える」ことを挙げます。とくに後者では、「カタカナ語の乱用」が近年気になる問題だと明かしました。
川瀬さん:「根拠」ではなく「エビデンス」とか、「議題」ではなく「アジェンダ」とか……。相手に意図が正確に伝わらない危険性もありますし、「本当は意味がわからないけど、質問しづらい」と気まずい思いをさせてしまいかねませんよね。可能な限り平易な言葉を使ってわかりやすく伝えたほうがいいかと思います。
ほかにも「よかれと思って一度にいろいろ説明しようとした結果、逆に相手に伝わらない」という落とし穴があるそうです。
川瀬さん:一気に細かい部分まで説明してしまうと、相手は内容が頭に入ってこず、むしろ飽きてしまいます。そして相手が飽きているのを感じて、余計饒舌になってしまう……。そんな悪循環にはまってしまった人は多いんじゃないでしょうか?一気にたくさん説明することは、必ずしも親切とは限りません。
川瀬さんが身を置いていたテレビ報道の世界では、ほとんどのニュースが1分程度で報じられます。短い時間で伝えるとなると、大切なのは“伝えたい情報の優先度”。そのためニュース番組では、もっとも伝えるべきことを最初に伝えた上で、「なぜそうなったのか」や「専門家はどう見るのか」といった部分を付け加えていく構成が採用されています。
川瀬さん:日常会話でも、まず「相手が欲しがっている情報はこれだろう」という内容を最初に伝えて、それに対する反応を見て説明を深めていくといいでしょう。最初に「こういったテーマがあります」と箇条書きで伝えた上で、相手に選択を委ねるのもいいですね。なんにせよ、大切なのは“相手の反応で出方を変える”ということです。
あいさつが“おまじない”になっていないか?
話し方を改善するための第1歩として行うべきことは何でしょうか?川瀬さんは、「最初の一言が“おまじない”になっていませんか?」と指摘します。例えば、「〇〇社のAです。よろしくお願いします」のようなあいさつは、自分にとっては言い慣れた言葉なので、つい早口になってしまいがちです。でも、相手にとっては初めて聞く音の並びです。サラッと一息に言ってしまっては、聞き取ってもらえない場合もあるはずです。
川瀬さん:「はじめまして」や「こんにちは」「いつもお世話になっております」は、おまじないではなくあいさつです。言葉は魂が乗らなければ生きてきません。最初のあいさつを相手に聞き取りやすいように丁寧に発音するだけでもだいぶ印象が変わりますよ。
ところで、好印象を与える話し方において、もともとの声質というのも関係するものでしょうか?高い声のせいで幼い印象を与えてしまうのが悩みという人もいるようです。
川瀬さん:高い声の方の場合、子どもっぽい印象やヒステリックな印象を与えかねませんね。その分、落ち着いて話すことや大人らしい言葉選びを意識するといいですよ。高い声には明るさという長所もあるので、少し気を付ければ一気に印象が変わるはずです。逆に低い声の人は、暗い印象を与えかねないので声を張ることを意識するといいですね。
どんな声質であっても長所と短所があるようです。そういった自分の話し方を客観的に見つめるために、川瀬さんは、“自分が話す姿を動画で撮影してみること”を推奨します。動画を撮ることにより、声の響き方に加えて、話すときの目線や仕草もチェックできるそうです。
川瀬さん:話し方教室でも動画でのセルフチェックを実施していますが、「話し方はハキハキしているのに目線が落ち着かない」とか「手がそわそわしている」といったことがわかるので、受講生の皆さんは愕然としています(笑)。でも自分の長所・短所を正確に自覚するほど、改善もしやすいですからね。