フランスに本部を置く、世界最大のコスメ企業「ロレアル」の創業者、ウージェンヌ・シュエレールの一人娘であるリリアンヌ・ベタンクールさんが、9月20日に逝去されました。娘のフランソワーズ・ベタンクール・メイエルさんが、「母は自宅で安らかに亡くなりました」と発表。享年94歳でした。
フォーブスが3月20日に発表した『2017年版世界長者番付』によると、リリアンヌさんは、保有資産の女性ランキング1位、全体ランキングでは14位、資産総額395億ドルとされています。
この世界一の女性富豪、リリアンヌさんの94年間の人生は、どのようなものだったのでしょうか?
ロレアル創設者の娘に生まれ、ロレアルで研修
リリアンヌさんは、1922年10月21日パリで生まれました。5歳の時にピアニストだった母親を亡くしています。14歳の時に、ロレアルで研修を体験しました。
ちなみに、フランスでは今でも、中学の最終学年に企業研修をすることが義務付けられていて、両親の勤める会社で研修する生徒は少なくありません。
研修といっても、中学生に大事な実務を任せるはずはなく、見学、あとは簡単な作業を体験というレベルです。リリアンヌさんの場合は、以後、父から帝王学を学びながら、同社の経営に携わります。
ジャーナリスト・実業家・政治家のアンドレ氏と結婚
1950年には、ジャーナリスト、実業家、政治家と多彩な顔を持つアンドレ・ベタンクール氏と結婚。1953年に、一人娘フランソワーズが生まれました。
1957年、父ウージェンヌ氏の死去に伴い、遺産を相続した35歳のリリアンヌさんは、すでに当時大企業になっていたロレアルの筆頭株主になります。実業家としても才覚をふるい、同社が世界規模の企業に発展したことに大きく貢献したと言われています。
また、リリアンヌさんは、慈善家でもあり、1987年には夫アンドレ氏とともに、医療研究、文化、社会事業支援を目的としたベタンクール=シュエレール基金を設立しました。
80歳を過ぎても「生涯恋愛現役」
人もうらやむような華々しい人生を送っていたリリアンヌさんですが、晩年は一転して、公私ともに様々なスキャンダルに見舞われます。
2007年には夫アンドレ氏が88年の生涯を閉じますが、その直後に、リリアンヌさんと25歳年下の写真家フランソワ=マリー・バニエ氏が恋愛関係にあったことが発覚。バニエ氏は、小説家、デザイナー、画家、俳優としての経歴もあります。リリアンヌさんは多才な男性に魅かれるようですね。
現フランス大統領マクロン氏の妻ブリジットさんも25歳年上と、生涯恋愛現役のフランス人女性にとって、80歳を過ぎて恋人がいることは不思議ではありません。しかし、世界で一番リッチな女性となれば話は別です。
スキャンダルに見舞われた晩年
バニエ氏はリリアンヌさんから数億ユーロ相当の贈り物を受け取っており、中にはセーシェル諸島のアロス島まで含まれていたことが分かりました。リリアンヌさんの娘、フランソワーズさんは、判断力が衰えたリリアンヌさんに付け込んだ詐欺として、バニエ氏を訴えたのです。
ところがそれに対して、リリアンヌさんは、「バニエ氏は自分の友人であり、娘は嫉妬している」と発言し、母娘の確執が明らかに。
さらに2010年には、当時の大統領ニコラ・サルコジ氏の2007年の選挙活動時に違法献金をした疑いで、リリアンヌさん自身が取り調べを受けました。
2011年、裁判所は、リリアンヌさんが認知症とアルツハイマー病を患っていると判断。娘と孫を後見人とし、その後、ロレアル役員の任も解かれることになりました。
元恋人のバニエ氏に対しては、2016年に、執行猶予付きの懲役刑4年、37万5千ユーロの罰金が科せられました。
世界でもっともお金持ちの女性は「幸せ」だったか?
以降、もともとメディア嫌いとして知られていたリリアンヌさんは、高齢と病気のため、人前に出ることもほとんどなく、静かに息を引き取ったようです。
世界でもっともお金持ちの女性となり、実業家、慈善家として活躍しながら天寿を全うしたリリアンヌさん。晩年は様々なスキャンダルに見舞われましたが、幸せな人生だったのでしょうか。その答えは、ご本人のみが知るのでしょう。
文・江草由香(BisouJaponビズ・ジャポン編集長)/DAILY ANDS
【こちらの記事もおすすめ】
>女性を超える関心度!?「オトコの美活」意識調査結果
>住宅ローン控除(減税)をフル活用するための基本の「き」
>実はハイリスクなライフイベントTOP5。転職、住宅購入、結婚……
>2018年マンションの「駆け込み」需要が起きるってホント?
>じぶん時間がもっと増える「ちょこっと家事代行」3選