性交への同意を自分で判断できる年齢を16歳に引き上げるなど、性犯罪に関する刑法改正試案が公表されました。
今回の改正論議では、「未成年者を性犯罪から守る」という視点が中心となっています。試案にはどのような内容が盛り込まれたのか、詳しく見ていきましょう。
性交同意年齢を16歳に引き上げ
法務省法制審議会の刑事法部会が2022年10月24日に公表した試案では、性交同意年齢はこれまでの13歳から16歳へと引き上げられています。
ただし、中学生同士など同年代の恋愛行為までが処罰の対象になることを避けるため、年齢差が5歳以上の場合に適用されることになっています。
13歳という年齢規定が制定されたのは1907年(明治40年)ですから、100年以上改正されておらず、「時代にそぐわない」と批判されていました。諸外国をみても、カナダや英国は16歳、フランスは15歳で、日本と同じ13歳だった韓国でも2020年に16歳に引き上げられています。
子どもを手なずける「グルーミング罪」新設
性交やわいせつな行為をする目的で子どもを手なずける、いわゆるグルーミング行為についての罪の新設も盛り込まれました。
近年、SNSなどを通して子どもと仲良くなり、実際に会ってわいせつな行為をしたり、卑猥な画像を送信させたりするケースが増加しています。しかし、信頼関係ができあがっているため、子どもが被害に遭っていることを認識できないという問題点が指摘されていました。
試案では、わいせつ目的で16歳未満に対して面会を求める行為や、性的な映像を送信するよう求める行為などを処罰の対象としています。
暴行・脅迫以外の手段も対象に
さらに、現行法の強制性交等罪と準強制性交等罪を1つの規定にまとめ、構成要件として以下の行為を列挙しました。
具体的には、以下の8つの行為です。
・暴行又は脅迫を用いる。
・心身に障害を生じさせる。
・アルコール又は薬物を摂取させる。
・睡眠その他の意識が明瞭でない状態にする。
・拒絶するいとまを与えない。
・予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、又は驚愕させる。
・虐待に起因する心理的反応を生じさせる。
・経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させる。
現行刑法では、強制性交等罪が成立するためには「暴行又は脅迫」を用いることが要件となっていますが、今回の試案では、「暴行や脅迫」以外の行為についても対象を広げました。
例えば、「暴行又は脅迫」がなくても、恐怖で頭が真っ白になり体が動かなくなる「フリージング」状態などが当てはまることになります。
また「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させる」とは、具体的には、学校の教師やスポーツチームの監督・コーチなどが地位を利用して子供に対して性交をする場合などが想定されています。