コロナ禍で常にマスクをつける生活が2年以上続いています。中には「もはやマスクなしでは人と話せなくなってしまった」「マスクがないと落ち着かない」など、マスクを手放せなくなってしまった人もいるとか……。
「マスクは顔の表情や滲み出ちゃう本音を絶妙に隠せるので、社会人として生きていく上で絶対欠かせない“防具”です!」と語るのは、社会人歴4年目の今泉春香さん(25歳・仮名)。 「勤務先では、勤務中はもちろんお昼の時間も外しません。食べるたびにマスクを外側から引っ張って空間を作って、下から箸を滑りこませれば全然いけます!」 マスクに食べ物の汁がついたり、逆に衛生面が少し心配ですが……。一体なぜそこまで徹底するのでしょうか。
増える「マスク依存」は新しい現代病?
新型コロナウイルスの感染予防のために多くの人が着用し、“生活になくてはならないもの”になっているマスク。もはや私たち現代人にとって、心のよりどころと言っても過言ではありません。ですが、「ないと不安定になってしまう」というくらい強く依存してしまうと、新たな現代病として生活に支障をきたす可能性も……。 国内の医師12万人以上が参加する、医師専用コミュニティサイト「MedPeer(メドピア)」が会員の医師1,058人を対象に「コロナ禍のいま、広がる新現代病」についてアンケートを実施しました。その結果、1位の「マスク皮膚炎」に続き、2位に「マスク依存症」がランクイン(2020年12月・医師専用コミュニティサイト「MedPeer」調べ)。 「今注意すべき現代病」として、現役の医師から「マスクがないと落ち着かない人の増加が目立つ」(一般内科・30代)というコメントもあがっています。
マスクをつけたら、体調不良がピタリとなくなった
「マスクは社会人に必要不可欠の防具。もはや下着同然なんです!」と言い放った今泉さん。その真意とは? 「仕事でミスをしたときに辛そうにしていたり、ぐっと堪えたりしているところを見られずに済むという理由ももちろん大きいです。でもやっぱり、表情を隠せることがなによりありがたくって。今までは、上司からの理不尽なお説教やむちゃぶりに、胃をキリキリ痛めながらも愛想笑いをしながらなんとか答えていました。 世間話もそう。『いつ結婚するの?』『もらってくれる人いるの?(笑)』とかセクハラまがいの発言に耐えつつ、超絶イライラしながら仕事をこなしていたんです」 当時を思い出したのか、おしぼりをきつく握り締め、そのしずくが机にポタポタと……。相当ストレスが溜まっていたのでしょう。 「もちろん社会人だからって、大人だからってなんでも愛想笑いでスルーできるわけじゃないですよね? メンタルが強い人は気にしなかったり、はねのけられるかもしれないけれど、私はそうじゃなかった。上司の声を聞くだけで胃が痛いし、お腹はくだすし、気持ち悪くなるし。でもコロナ禍になってマスク着用がほぼ強制的になったとき、嘘みたいにピタリと体調不良がなくなったんです」
マスクは私を、理不尽な世界から守ってくれる
マスクが上司の小言や、他人の視線から守ってくれる防具(ガード)になったということでしょうか? 「そうです。『マスク一枚でなにも変わらないよ』って言われるかもしれませんが、私は変わったんです。心がガードで守られるような感覚でした。辛いのに無理して愛想笑いをしなくていいし、堂々と歯を食いしばって耐えられる。マスクの下で歯をむき出しにして威嚇(いかく)したり、思いっきり口角を下げてへの字口にしたりもできる」 マスクの下は見えないから、無理に“社会人”にならなくていい。そう思うことで心がラクになったのだそう。 「人と壁を作ると言うと語弊がありそうですが、人と適度な距離を保てているような。それがマスクのおかげでできるようになったんです」 彼女にとってマスクは、社会人としての自分を支えてくれる“心のよりどころ”でもあり、外敵から守ってくれる防具にもなったそうですが……