保険代理店として業務を始めるまでの流れ
保険代理店を始める場合、以下のような流れで手続きが進められる。
その1 保険会社を選ぶ
保険代理店開業の第一歩は、保険会社選びから始まる。手数料体系や監査の厳しさなどは、保険会社によって異なる。また保有している資格の種類や資格保有者の人数が、手数料率に影響してくるところもある。そのため保険代理店を始めるにあたっては、各保険会社の情報について念入りに調べておく必要が大切だ。
その2 代理店研修と代理店試験
委託を受ける保険会社を決めたら、次は会社が実施する代理店研修を受講する。代理店は、保険会社と消費者のパイプ役となって保険に関する知識・情報を提供したり、交渉のサポートをしたりする役割を担う。また事故が発生した場合はその受付・報告をし、早期・円満解決に向けたサポートをしなければならない。
さらに2016年の保険業法改正により、保険代理店にも保険業務の健全かつ適切な運営を確保するための「体制整備義務」が課せられるようになった(保険業法294条の3)。
代理店研修ではその職務を果たすため、また、顧客のニーズを満たすために必要な知識やスキルについての教育が行われる。そして研修後は代理店試験を受験し、これに合格する必要がある。
その3 保険会社と代理店委託契約を締結
代理店試験に合格したら、いよいよ代理店委託契約の締結である。この契約によって保険代理店は、保険会社からその代理店として、一定の事実行為や法律行為を継続的に行うことを委託される。
その4 財務局に保険代理店の登録
保険会社との委託契約締結が完了したら、財務局に登録の申請をする。そして財務局による審査と登録が完了したら、保険代理店として保険の販売をすることが認められる。
保険業は金融庁監督のもと、保険業法を根拠として遂行されるものである。そのため代理店の開業についても、厳格なルールが定められているのだ。財務局への登録完了が代理店開業の第一歩になることから、このことを「保険代理店資格の取得」と表現する人もいる。
保険の募集に必要な資格~損害保険編~
保険代理店を開業して損害保険の販売をするためには、代理店としての資格の他に、募集人としての資格も取得しなければならない。これが「損保一般試験」である。この試験では保険募集をするにあたり、その商品についての重要事項説明等をするだけの知識があるかどうかが試される。試験に合格できなければ代理店登録はもちろん、該当する保険商品の取り扱いをすることもできない。
試験科目には「基礎単位」と「商品単位」の2種類があり、商品単位については「自動車保険単位」「火災保険単位」「障害疾病保険単位」の3つに分類される。点数配分は各科目100点ずつで、合格基準は70点だ。またこの試験は各単位ともに5年更新制となっている。そのため保険代理店を続けるためには5年おきに損保一般試験を受験し、合格する必要がある。
そして損保一般試験は、合格したからといって直ちに募集行為を開始できるわけではない。募集人届出が完了して初めて、保険の募集・販売ができるようになるのだ(保険業法302条)。そのため試験に合格して募集人届出が完了することを、「募集人資格を得る」と表現する場合もある。
また「損害保険募集人」については、保険業法2条20項において「損害保険代理店」「損害保険代理店の役員」「損害保険代理店の使用人」がこれに該当すると規定されている。そのため保険代理店を始めるにあたり募集行為をする従業員を雇用する予定がある場合は、その者についても損保一般試験に合格して募集人としての資格を得てもらう必要がある。