いつものスキンケアが合わなくなってきた。ふとした時に気づく、コンディションの変化。それは化粧品などのアイテムと、肌の距離が遠ざかったからかもしれません。

『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)は大人肌を慈しむ一冊。

肌がボロボロになる勘違い美容5選。帰宅してすぐメイク落としetc
写真はイメージです。(以下同じ)
 著者は化粧品開発者の茂田正和氏で、スキンケアブランド「OSAJI」のディレクターでもあります。日進月歩の化粧品業界、自宅でできるピーリング剤やシミ消しクリームなども手軽に入手できるようになりました。技術や成分が革新的でも、残念ながら万人の肌に効果を発揮するわけではありません。微妙な変化に気づいたら、スキンケアの見直しをしてみませんか。

◆大人肌、やめるべきはこの5つ

 本書によると「知らずに肌の健康を害しているかもしれない」やめるべき美容は以下の5つ。

①“高浸透”を謳っている化粧品の使用

② 油分過剰の弊害を招くオイル美容

③ 帰宅してすぐのメイク落とし

④ 朝の洗顔に洗顔料を使うこと

⑤ 肌を擦る&叩くような美容術

 今回はこの中から①②③について詳しく見ていきたいと思います。

◆“高浸透”という言葉の罠

“高浸透”という言葉の罠
 まず①、まさかの“高浸透”NG! くたびれがちな大人肌にこそ必要な響きですが、実際“高浸透”って肌にどう作用しているのでしょうか。

 本書の解説をまとめると、「高浸透とは、シワやたるみが起こる真皮層まで美容成分を浸透させること」。ここまではOK、問題は「皮膚というのは外部からの異物が侵入しないよう、角質層には二段ブロックのバリア機能を備えている。真皮層まで高浸透させるには、二段ブロックを壊さなくてはらなない」。

 つまり、高いリスクあっての高浸透なのです。「年齢を重ねると壊れたバリア機能の修復に非常に時間がかかる」と本書。バリア機能が弱まる=外部からの刺激にも弱くなる、肌荒れやかぶれの原因にもなるかもしれません。

 大人美容の領域は「角質層レベル」。角質層から下の領域は「インナーケアで改善するのが最も安心」だそう。ちなみに「美容の6割は食で決まる」というのもチェックポイントです。

◆植物アレルギーにご用心

植物アレルギーにご用心
 ②のオイル美容は自然派の方々に人気ですよね。私も一時期オイルにハマって、様々とりそろえていましたが、ここでもまたバリア機能が登場します。「油分を過剰供給すると、バリア機能を構成する細胞間脂質をゆるめてしまい、水分蒸散を防ぐ力が下がってしまう」というのです。

 さらにオイル美容のほとんどが植物油。「植物油が高浸透して細胞間脂質がゆるみ、バリア機能が低下するとアレルギー反応が起こりやすくなる」。突然のかゆみや湿疹の原因がオイル美容? そんな悲劇は招きたくありません。

◆汚れも一緒にマッサージ?

汚れも一緒にマッサージ?
 ③は一見肌によさそうですが、ここにも落とし穴が。「帰宅したばかりの肌は、外的刺激となる物質が付着した状態」と本書。クレンジング前に手を洗う人はいても、顔には直接クレンジング剤をのせてクルクルしますよね。すると、排気ガス中のPM2.5や花粉などが肌の上で混ざり合い、肌の中に浸透されるのを助ける、という状態に。

 ここで大事なのが「クレンジング前の水でのすすぎ洗い」。クレンジングの前に顔を水でよくすすぎ、やさしくタオルで水気を抑えてからクレンジング。明日からこのひと手間を加えて、すこやかな肌を保ちましょう。

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『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』
 本書を読んでいると、著者がいかに肌そのものを大切にしているかがわかります。肌が本来持っている力を最大限生かすために、化粧品は存在するのです。主役は化粧品ではなく肌。0.02mmという薄さで、毎日外敵からあなたを守り、がんばっているあなたの肌なのです。42歳になったら始める美容も目からウロコですよ。

<文/森美樹>

【森美樹】

1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)を上梓。Twitter:@morimikixxx