ETFと投資信託を同じようなイメージで捉えている人は多いでしょう。どちらも運用をプロに任せるという点では共通しています。しかし、いくつか異なる部分もあります。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。また、それぞれどんな人に向いているのか分析します。
ETFと投資信託の違いとは?
はじめに、ETFと投資信託にはどのような違いがあるのかを確認します。
ETFは投資信託の一種
ETFは基本的には投資信託の一種です。投資家から集めた資金を運用して、成果を投資家に分配金という形で還元します。これから両者の違いをみていきますが、ETFは取引方法や取引時間などが株式に近い投資商品といえます。
上場の有無
ETFと投資信託の最も大きな違いは上場の有無です。ETFとはExchange Traded Fundsの略で、「上場投資信託」と呼ばれています。東京証券取引所に上場され、証券会社に口座を持っていれば、株式と同じように売買できます。取引価額も新聞の株式欄に掲載されるので一覧で確認でき、銘柄選びの参考になります。
商品の種類
ETFの主な種類には、「国内株式」「外国株式」「国内債券」「外国債券」「REIT(不動産投資信託)」「商品(コモディティ)」などがあります。また、国内株式のなかには「レバレッジ型」と「インバース型」があり、レバレッジに近い投資も可能です。レバレッジ型では、日経平均など対象株価指数の2倍の値動きをするように設計されています。一方のインバース型はマイナス2倍の値動きをするように設計され、相場下落時に利益を出すことができます。相場全体の流れをみながら使い分けるのもよいでしょう。
投資信託は、大きく分けて株式を中心に運用する「株式投資信託」と、株式を一切組み入れない「公社債投資信託」の2種類があります。さらに募集形態が、いつでも購入できる「追加型」と、募集期間のみ購入できる「単位型」に分かれます。したがって、細かく分けると、「追加型株式投資信託」「単位型株式投資信託」「追加型公社債投資信託」「単位型公社債投資信託」の4つのタイプがあることになります。
取引方法
ETFは上場しているので、株式と同じようにリアルタイムで取引できます。買い方は、証券会社を通して指値や成行注文で発注します。取引時間は市場の取引時間に準じます。売買委託手数料と銘柄ごとに信託報酬がかかります。
一方の投資信託は価額が1日1回しか付きません。投資信託は、組み入れている株式や債券の時価評価をもとに基準価額が決定されます。
算出方法は、まず組み入れ資産の時価評価額に株式の配当金や債券の利息などを加算して資産総額を計算します。次に運用に必要な費用を差し引いた「純資産総額」を発行済み口数で割って、1口あたりの価額を算出します。基準価額は市場の終値をもとに算出され、1日1回20時頃に発表されます。投資家は、発注したあとその日の基準価額が決定するまでは、買値を確認することができません。
投資信託と比べたETFのデメリットは?
上場されていて取引方法の利便性が高いETFですが、投資信託と比較すると以下のようなデメリットがあります。
証券会社でしか購入できない
投資信託は、ファンドごとに販売会社が異なり、銀行、証券会社、郵便局などで購入できます。購入場所の選択肢が豊富です。一方のETFは、証券会社でしか購入することができない点がデメリットです。購入先を銀行・郵便局に絞りたい人は、ETFの投資には向いていません。
ただし、証券会社でも普通の投資信託を購入することはできるので、証券口座を持っておいたほうが、投資機会が増えるのは事実でしょう。
基本的にパッシブ運用
ETFの運用方法はパッシブ運用が基本です。「パッシブ運用」とは、対象になる指数と同じ銘柄・比率で株式や債券を保有する方法です。定期的に見直しながら保有比率を工夫し、指数の動きに連動した投資成果を目指します。「インデックス運用」と呼ばれることもあります。これに対し、市場平均以上の投資成果を目指し、調査して銘柄を選別しながら運用する方法が「アクティブ運用」です。
商品数が少ない
ETFは、上場している投資信託なので、ある程度商品数が限定されています。2020年11月10日現在、東京証券取引所に上場されているのはわずか232銘柄に過ぎません。投資信託は、後述するように、インターネット主要5社の取扱本数が1,167~2,637本なので、大きな差があります。
流動性が低い銘柄もある
ETFのなかには流動性が低い銘柄もあります。ファンドの運用資産が少なくなり、目標とする運用が困難になると、最悪の場合上場廃止になる可能性があります。上場廃止になると繰り上げ償還になり、買値を下回っていた場合は損失が確定します。流動性が低くなり、上場廃止の恐れがある銘柄は「管理銘柄」に指定され、周知されるのでその間に売却することは可能です。
上場廃止になりそうな銘柄を避けるには、預かり資産が多い銘柄を選ぶことです。「純資産」のデータは公開されているので、投資にあたってはチェックするようにしましょう。
ETF、投資信託にそれぞれ向いている人は?
ETFと投資信託は商品としての性格が異なるため、向いている人のタイプがあります。まずは、自分がどちらのタイプに近いかを考えてみましょう。
投資信託に向いている人
投資信託は、以下のようなタイプの人に向いています。
・投資経験があまりない人
投資経験の少ない人は投資信託から入ったほうが無難かもしれません。先述したようにETFはリアルタイムで価額が変動しますので、投資に慣れていないと売買タイミングの判断を誤る可能性があるからです。投資信託は市場の取引が終わらないと価額が決定しないため、落ち着いて運用することができます。慣れるまでは投資信託でどのように価額が変化するのか経験するのもよいでしょう。
・少額で試してみたい人
投資信託は少額で試してみたい人に向いています。ETFは1単元から購入できるものもあれば株式同様に100単元からのものもあります。一方、投資信託は原則として1口から買えるため、数千円から投資が可能です。初めての投資なら、まず数千円から始めて、慣れてきたら徐々に投資金額を増やしていくのも有効な方法といえます。
・積立投資をしたい人
投資信託は積立投資に向いている商品です。個別株と違い、日々の株価を気にする必要はないため、毎月定額を積み立て、コツコツ増やす戦略がとれます。毎月定額を購入することで、相場が上がっているときは少ない口数を購入することになります。逆に、下がっているときは多くの口数を購入することになり、結果的に買いコストを平準化することができます。「ドルコスト平均法」を応用した買い方ができるのが積立投資のメリットです。
・つみたてNISAやiDeCoで資産運用を考えている人
投資信託は積立投資に向いているので、NISA(少額投資非課税制度)や iDeCo(個人型確定拠出年金)での運用に最適です。NISAには積立投資に特化した「つみたてNISA」という制度があります。iDeCoも株式は対象外で、運用できる商品が「投資信託」「定期預金」「保険」に限定されています。株式のようなリスク資産を避けたい人にはNISAやiDeCoを利用した投資信託への投資が最適といえるでしょう。
ETFに向いている人
一方、ETFに向いているのは、以下のようなタイプの人です。
・投資に慣れてきたので自分で試してみたい人
投資に慣れてくると、プロに運用を任せるだけでは物足りなく感じるかもしれません。自分の判断で個別株を売買してみたいという思いも出てくると思われます。そのような人は個別株の投資に進む前に、ETFで値動きのある投資にチャレンジしてみるのもよいでしょう。価額も個別株ほど乱高下はしないので、試しに投資してみるのには最適です。
・リアルタイムでの市場価格で購入したい人
ETFは株式と同じように、リアルタイムの市場価格で売買することができます。リアルタイムで利益を確定できることから、株式投資と同じような醍醐味を味わえるのが特徴です。市場価格で購入したい人に向いていますが、一方でリスクも大きくなることを心得る必要があります。
・より低コストで投資をしたい人
ETFと投資信託を比較すると、ETFのほうが取引コストは安い傾向にあります。ETFは上場しているので、投資信託の販売手数料に比べてコストが低めです。信託報酬は投資信託の0.1~2.5%程度に対し、ETFは0.1~1.0%程度(銘柄によって異なります)となっているので、より低いコストで投資をしたい人にはETFが向いているといえるでしょう。