「女性でも稼げる仕事に就きたい」

昨年、リアリティー番組『テラスハウス』で女子大学生がこんな切ない一言を漏らしていた。

それに対し、「自分より若い人にそう思わせてしまっていることがあまりに悲しい。稼いでいくし、変えていきたい」と声を上げたのが、社会課題解決に特化したクラウドファンディングサービスを行う株式会社GoodMorning代表の酒向萌実さんだ。

 

本記事では、前編に引き続き、「女性と稼ぐこと」にまつわる課題について、酒向さんと、女性キャリアやジェンダー問題に詳しいフリージャーナリストの治部れんげさんに議論してもらった。

酒向萌実/治部れんげ

写真左:酒向萌実さん 株式会社GoodMorning代表取締役社長。1994年2月生まれ、東京出身。国際基督教大学卒業後、アパレル企業の株式会社TOKYO BASEを経て、2017年1月、株式会社CAMPFIREに参画。社会課題解決に特化したクラウドファンディングサービス『GoodMorning by CAMPFIRE』の立ち上げに携わり、18年1月より事業責任者として活躍。19年4月、GoodMorningの事業分社化に伴い、代表取締役社長に就任 Twitter:@SAKOMOMI

写真右:治部れんげさん フリージャーナリスト。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。1997年一橋大学法学部卒業後、日経BP社入社。経済誌の記者・編集者を務める。2014年からフリーに。国内外の共働き子育て事情について調査、執筆、講演などを行う。著書『稼ぐ妻・育てる夫―夫婦の戦略的役割交換』(勁草書房)、『ふたりの子育てルール』(PHP研究所)、『炎上しない企業情報発信 ジェンダーはビジネスの新教養である』(日本経済新聞出版社)など Twitter:@rengejibu

後編は、職場における「女性だから」という思い込みの外し方について、お二人の意見をお届けしよう。

 

管理職になるのに“意識の高さ”はいらない

――社内でのキャリアアップは収入を上げることに直結しますが、「女性は管理職になりたがらない」なんてこともよく言われますよね。でもこれ、本当なんでしょうか?

酒向:「私に管理職なんて務まるのか」って心配している女性は多い印象ですね。

管理職のポストを打診された友人が「私にできるのかな……」と不安げに言っていて、「身構えずにやってみたら?」という話をしたこともあったので。

でも、何でそう感じてしまうのかっていうと、女性が管理職をやりたくないっていう話じゃなくて、社会にそう思わされてしまうっていうのが大きいんじゃないでしょうか。

――というと?

酒向萌実

酒向:例えば、女性が管理職になったり、経営ボードに加わったりすると、“女性が抜擢された”っていう感じで、仰々しく報じられたりしませんか?

私も時々「女性経営者」って言われますけど、レアな存在だからわざわざ「女性」って付けられてしまうわけで。

「あなたは特別なんだ」って周囲から言われているような気がして、余計にプレッシャーを感じてしまうんじゃないかと。

治部:もっとぼーっとしていていいのにって思いますよね。

だって、周りを見てください。年功序列の組織でぼーっとしているうちに課長になっちゃった、みたいな男性も結構いますよね?

酒向:(笑)

治部:男性がそうであるように、社内で昇進して収入を増やしていくことを女性ももっと普通のこととして考えてもらいたいですね。

一社で働き続けなかったとしても、キャリアを重ねればステージの変化を迫られる時は誰にでも来ますから。

酒向:これは自分自身の経験でもあるんですけど、女性に管理職への昇進を打診するとき「どう……?やってみたい……?」なんて遠慮しながら聞くケースが多くありませんか?

でも、男性が相手だった場合、「あなた次、管理職だからよろしくね」ってもっとあっさり昇進を打診しているんじゃないかと。

治部:確かにそうですね。あと、昇進を打診されて「僕で務まるのか……」なんて口にする男性はほとんどいませんよ。

それはきっと、社内で昇進・昇格するのは特別なことじゃないと捉えているからだと思います。

「女性が管理職をやりたがらない」と一言で問題を片付けずに、会社や社会の中で、もっと「女性が管理職になるのは当然のこと」という価値観を育てていく必要がありますね。