資産形成には、成功あるいは失敗を避けるための、古くから確立された手法が存在します。それと同時に、誤った理解がなされていることも多々あります。そこで、投資初心者や投資歴1~3年程度の人向けに、投資手法のエッセンスをまとめ、セオリーに立ち戻れる内容を連載でお届けします。

長期投資といっても、ただ保有し続けるだけで成功できるほど投資の世界は甘くありません。そのなかで世界最高の投資家、ウォーレン・バフェット氏は「超長期投資」で成功しています。今回は、彼の投資手法、スタンスを理解し、成功の理由を探ります。

長期投資が有利な理由とは?

はじめに、長期投資がなぜ有利なのかを考えてみましょう。

アインシュタイン氏も絶賛する「複利の効果」

長期投資が総じて資産増加効果が大きい理由は、複利効果にあります。有名な物理学者アインシュタイン氏が「人類最大の発明」と複利について絶賛しています。天才学者も認めた複利は、単利に比べてどれくらい資産増加効果があるのでしょうか。

▽単利運用と複利運用の比較表(設定条件:株価1,000円、投資株数1,000株、配当金1株10円)
 

単利運用 複利運用(配当金を再投資)
期間 持ち株 配当金 通算配当 持ち株 配当金 追加投資 通算配当
1年目 1,000株 10,000円 10,000円 1,000株 10,000円 10株 10,000円
2年目 1,000株 10,000円 20,000円 1,010株 10,100円 10株 20,100円
3年目 1,000株 10,000円 30,000円 1,020株 10,200円 10株 30,300円
4年目 1,000株 10,000円 40,000円 1,030株 10,300円 10株 40,600円
5年目 1,000株 10,000円 50,000円 1,040株 10,400円 10株 51,000円
6年目 1,000株 10,000円 60,000円 1,050株 10,500円 10株 61,500円
7年目 1,000株 10,000円 70,000円 1,060株 10,600円 10株 72,100円
8年目 1,000株 10,000円 80,000円 1,070株 10,700円 10株 82,800円
9年目 1,000株 10,000円 90,000円 1,080株 10,800円 10株 93,600円
10年目 1,000株 10,000円 100,000円 1,090株 10,900円 10株 104,500円

※追加投資は小数点以下切り捨て。

上表は10年間、株価と配当金が同じだったと仮定した場合の、単利運用と複利運用の比較です。単利は配当金を生活費等などに回した場合、複利運用は受け取った配当金で10株ずつ買い増しした場合で算出しています。10年間の運用において、配当金で4,500円、時価総額で9万円(90株×1,000円)、合計で 9万4,500円 もの差が生じることがわかります。配当金は、使わずに再投資することで福利効果が得られ、持ち株も増えていくのです。

長ければ長いほど投資の効果が出る

米経済雑誌「フォーブス」が発表した「世界長者番付2020年版」によると、ウォーレン・バフェット氏(1930年8月30日生まれ)の資産額は754億ドル(発表当時の為替レート1ドル109円換算で8兆2,200億円)で第4位にランクインしています。

巨額の資産ですが、実はバフェット氏は資産の大半を50歳以降に築いています。バフェット氏の1982年(52歳)時点の資産額は、3億7,600万ドル(2020年時点の0.5%)に過ぎません。つまり、残りの99.5%はそれ以降に築いたものなのです。

投資をはじめたころの資産の増え方は、緩やかになるのが一般的です。しかし、投資は期間が長ければ長いほど効果が出るという性質があります。バフェット氏は根気強く投資を続けた、52歳以降、急速に資産の増加ピッチが速まり、長い年月をかけて世界長者番付にランクインするまでになったのです。

頻繁な売買ではなく、いいものを長く保有することが大事

株式は売買する度に譲渡益税(利益が出た場合)と売買手数料がかかります。あまり頻繁に売買するとコストが割高となり、投資効率が悪くなるので注意が必要です。優良銘柄を長く保有し、大きく増えた段階で売却したほうが手数料も割安になります。