『キングオブコント2022』が、8日に放送された『お笑いの日2022』(TBS)内で行われ、ビスケットブラザーズが15代目王者となりました。

 3018組の頂点に立ったビスケットブラザーズは、ファーストステージで2位と11点差を大きくつけて引き離し、ファイナルステージでも482点を叩き出し、2位のコットンの474点との点差をあけたまま、悠々と王者への階段を駆け上りました。

 そんな圧倒的強さをみせたビスケットブラザーズの勝ちネタの初見時にくらった衝撃を<電車に乗りながら、準決勝の配信をスマホで見ていました。ビスケットブラザーズが最終決戦で披露したネタで、フミコがダイスケになった瞬間、あまりの恐怖に「ヒャッ!」と大きな声を上げてしまいました(笑)>と語るのは、構成作家の大輪貴史(おおわ たかふみ)さんです。

 大輪さんは、かつてピン芸人「大輪教授」として活動し、2007年にはR-1ファイナリストに選出されました。現在はお笑い養成所の講師や、複数のお笑い事務所による若手芸人のネタ見せもつとめる大輪さんに、栄冠を手にしたビスケットブラザーズの勝因や賞レースで上位に食い込むコツについてうかがいました。

◆優勝のビスケットブラザーズ「自分に似合っている役」を選び切った

――優勝したビスケットブラザーズのネタはいかがでしたでしょうか?

<1本目の「野犬」のコントは、原田さん演じる変態的ヒーローのキャラクターが、どこでどんな活躍をするかが、まずは大事なところです。

漫画やヒーロー物のドラマであれば、街で女性が「きゃー、助けてー!」と叫び、「待てーい!」と颯爽(さっそう)と登場するのだと思います。もしくは、悪い怪人が街を破壊していて「そこまでだー!」など言いながら出てきたり…。

しかし、ビスケットブラザーズは、なぜか野犬。なぜ野犬(笑)。

普通、あのキャラクターを活躍させるのに、野犬に襲われている男性を助けるシチュエーションは、なかなか選びません。そこがプラスに働き、オリジナリティーにつながったのだと思います。

また、このシチュエーションにはメリットがあり、野犬はいるものの街なかではないので、第3者を登場させる必要がなく、2人っきりで展開させることができたのも良かったですね。第3者が出ると、無対象の演技も必要になってきますし、変態は多数で相手するより1対1の方が困る(笑)。

個人的に感動したのは、最後に奨学金の話が出てきますが、序盤に話題に出た大学が真実として回収されているところでした。大学はボケじゃなかった。

とにかく、原田さんの見た目・声・演技・キャラクター、すべてが似合っていた、ハマり役でした。コントは、台本や演技ももちろん大事ですが、もっと大事なのは、「自分に似合っている役」を選び切ることだと、改めて感じました。>(大輪貴史さん 以下山カッコ内は同じ)

◆こんなコント、観たことがない!衝撃作でファイナルステージ突破

<そして2本目の「ぴったり」。

大会直後、ビスケットブラザーズのYouTubeチャンネルに「野犬」と「ぴったり」、披露した2本のネタ動画がアップされていました。あのコントのタイトル、「ぴったり」って言うんですね。

きんさん扮(ふん)するキミカに「ぴったり」の彼氏を紹介するから「ぴったり」。…そこ(笑)?

考えてみれば「野犬」も主役は「野犬」じゃない(笑)!

話がそれました。

正直、こんなコント、観たことありません。

衝撃を受けました。

よくよく冷静になりもう一度観てみると、観客の笑いを引き出しているのは、ダイスケではなくキミカの方になっています。「友だちは今、たった1人減りました」「(バイト先の変な人は)フミコがダントツトップを走ってます」といった具合です。

このコントのキモは、あのダイスケと会話ができているキミカの器の大きさでした。「もう1度フミコと話がしたい」というセリフは、実はメチャクチャ異常で、普通の芸人だったら通せるモノではないと思うのですが、これを通せているんです!

2人のキャラクターや雰囲気のなせる技ですし、これを疑問に思わないほど、我々は想像以上に異常な世界に連れて来られていたのです。

若手芸人がネタでスベるときは、この逆の現象がよく起こります。本人は面白いことを言っているつもりだし、意味合いを聞くと「なるほど、面白い」と思えることもあるのですが、実はそのセリフが通せる世界に観客を連れて行けていない。

逆に、連れていく作業を丁寧にしすぎてしまうと、無駄に長いネタになってしまったり…。

実は、ビスケットブラザーズは、すごいスピードでそのうえ丁寧に、我々を異常な世界に連れて行ってくれていたのです。>

◆ほぼリズムネタで駆け抜けた1組目のクロコップ

――優勝者以外で、とくに印象に残ったネタがもしありましたでしょうか?

<クロコップの「ホイリスト」は、1組目として非常に良かったですね。ほぼリズムネタと言ってもいいと思うのですが、リズムネタは、始まってから微妙な演技の緩急で観客との温度差を調整しにくいんです。

しかし、その心配もなく、ひとつ目のくだりからきっちりハマり、最後まで盛り上げながら駆け抜けました。

あのネタの最も素晴らしいところは、ゲームが成立していることです。もし、コントじゃなかったとしてもゲームができてしまうんです。そこに説得力が生まれていて、小手先の笑いを取るために変なボケを入れたり、矛盾が生じてしまったりすると一気に冷めてしまいます。

たまたまゲームをしていた2人を見たら、たまたま面白かったという世界。

とにかく自分たちの好きなことをやり通していました。

若手芸人によくあるのですが、賞レース対策を考えた結果、賞レースから遠ざかってしまうことが、ままあります。いわゆる「寄せる」ってヤツですね。

賞レースを意識して「寄せて」いたら、普通、ヘリでは帰りません(笑)。そこも高評価につながってしまう、お笑いが表裏一体で難しいところです。

1組目は、賞レースにおいて不利と言われるのでそこは口惜しく感じましたが、クロコップが1組目だからこそ、今大会は盛り上がったとも言える、歯がゆいところです>

◆「最高の人間の2本目」Twitterでトレンド入り

――大会終了後、Twitterで「最高の人間の2本目」がトレンド入りしました。9月1日2日に行われたキングオブコント準決勝で、最高の人間が披露したネタは見た人たちに強いインパクトを残し「決勝で披露してほしかった」という声があり、他にもニッポンの社長について同じ声があがりました。このあたりの、強いネタをファイナルステージに残す作戦は、賞レースの戦い方としていかがでしょうか?

<最高の人間の2本目は、個人的には私も決勝の舞台で見てみたかったです。準決勝で拝見した限り、真の意味でギャンブル性が高いネタだったので、それが当たるか当たらないか…、もし当たったら、優勝確定になるだろうなと思っていました。

2本目に強いネタを残したまま1本目を勝ち上がる、もちろん、これが理想です。

数年前までは、1本目どうにか勝ちにいって、2本目で息切れしてしまう展開もありました。(たまたまハマらなかった例もあると思いますが)

しかし、最近は本当にレベルも上がっていて、2本強いネタを用意できる組が増えたように感じます。

また、作戦の話とはややそれますが、キングオブコントは「準決勝で2本ネタを披露し、決勝もそのネタにする」という特性があります。これは、コントは漫才以上に、音響・照明・カメラワークなど、演出上スタッフとの連携が必要であるから、と個人的には推測しています。結果として、その演出の細やかさが、番組の盛り上がりに一役買っていると思われます。

そして、この特性の副産物として「準決勝を2日間見た人は、2本目のネタを知っている」現象が生まれ、このことが、SNSを盛り上げる要因のひとつとなっていますね。>

◆賞レースで上位に食い込めるコツは「ふざけてるのか?」要素

――去年の空気階段に続き、今年のビスケットブラザーズが歴代最高得点を更新しました。

<「歴代最高得点」は、まったく意味のない言葉だと思います。(ビスケットブラザーズは最高に面白かったですよ!)

大会の性質上、得点は「絶対値」ではなく、「(その日の)相対値」になりますので。

ビスケットブラザーズが優勝した要因は、演技力や構成もさることながら、少し悪ふざけも感じられたところでしょうか?

コントに対して、ある意味「ふざけているのではないか?」という疑惑が1割くらい感じられます。(本人は「そんなことない」とおっしゃるかもしれませんが)

クロコップのところで述べた「賞レース対策」「寄せる」問題。賞レースに寄せているとあまり感じさせませんでした。

それは、M-1グランプリでマヂカルラブリーが優勝した際に噴出した「漫才か漫才じゃないか論争」にも共通するところがありますし、過去のキングオブコントでも、どぶろっくが下ネタの歌ネタで優勝し、にゃんこスターがリズムなわとびで大きな爪痕を残したこともありました。

面白いプラス、そういった「こいつら、もしかしてふざけてるのか?」という部分を絶妙な塩梅で入れるのが、賞レースで上位に食い込めるコツかも知れません>

<文/女子SPA!編集部>

【女子SPA!編集部】

大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。twitter:@joshispa、Instagram:@joshispa