ある日、ファイナンシャル・プランナーである筆者の元に、30代の田中さん(仮名)夫婦からマイホームに関する相談が寄せられました。
奥様はこうおっしゃいます。「現在、夫婦二人で夫の会社の社宅に住んでいますが、15年後には社宅を出ていかなければなりません。夫は、社宅を出たあとは賃貸住宅に住み、定年後は実家に戻りたいと考えているようですが、私は、マイホームを購入したいと思っています。どちらが良いでしょうか?」
定年後は夫の実家に住む?
現在、ご夫婦にお子さんはいません。現在の社宅は広さが2DK、家賃は2万円。夫婦共働きで貯金も独身時代からコツコツ貯めていたため夫100万円、妻200万円あり、ゆとりを持って生活できると考えていらっしゃいます。
奥様によると、「賃貸派」の旦那様は、住宅ローンを組み、借金をすることに不安を感じていらっしゃるそうです。
一方、「マイホーム派」の奥様の言い分は次の通り。
「夫には姉と妹がいますが、すでに嫁いでおり、夫の実家には現在、両親が二人で暮らしています。夫は定年後、実家に戻りたいようなのですが、もし戻るとすれば、今から実家のリフォームや建て替えの費用を貯めていかなければいけないのではないでしょうか?」
住宅ローンを借りるのは不安…
「賃貸に住むべきか?マイホームを購入するべきか?」はよくあるマネー相談の一つです。さらに今回の場合、定年後に旦那様の実家に住むかどうか、も絡んでおり、夫婦だけで結論を出すのは難しいことでしょう。
そこで筆者は、実家に戻る可能性も考慮に入れつつ、購入する場合はどれくらいの資金が必要か考えてみるよう提案しました。
いくらまで借りられる?
借入可能額は、年収に対する返済割合と物件の建設費、物件の価値や購入価格の80~100%のどちらか低い金額となります。
“年収に対する返済割合”は総負返済担率といい、年収に占めるすべてのローンの年間返済額の割合です。例えば「フラット35」の場合、年収400万円未満の方は30%以下、400万円以上の方は35%以下に定められています。金融機関では、総返済負担率によって、ローンが利用できるかどうか審査が行われます。
住宅を購入するときには、教育費などの負担が増えているかもしれません。安定した収入が見込め、ローン返済の割合が適切であるなど、無理のない資金計画、家計管理が大切になります。また、総費用の2割以上を準備できると、有利な住宅ローンを選ぶことができます。
田中さんご夫婦の場合、ご主人の年収は400万円、田中さんの年収は300万円です。したがって、ご主人の年収を基準として住宅を購入するときの、総返済負担率は140万円、月に11万6,000円までになります。自動車ローンを月に3万円支払っているとすると140万円-(3万円×12ヵ月)=104万円、月々8万6,000円までです。田中さんの年収を合算して借りることもできます。
例えば、住宅の購入価格が4,000万円なら、頭金として800万円以上準備すると有利な金利で借り入れをすることができるということです。ちなみに、毎月の返済額が11万円とすると、借入金利1.0%、借入期間25年で2,910万円の返済が可能です。