自分の体や肌の色に合うかどうかよりも、心がときめくかどうかを指標にランジェリーを選ぶこと。心がときめいたら、いつでもその衝動に身を任せることができるように、準備をしておくこと。恋のようなランジェリーとの関係について、雨あがりの少女さんが綴ります。

恋をする瞬間はいつも何気ない。なんとなく元気で、なんとなくよい気候で、なんとなく世界が鮮やかに見える日に、不意にふわっと心が宙に浮き、揺れ動き、ああ私いま恋をしたのかな、と自覚する。「今日こそは恋をするぞ」と意気込んだからといってできるものではないから、おもしろい。

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下着を自分で選ぶようになったのは、高校生のころだった。どんなものがよいのかわからず、また店員さんに尋ねる勇気もとうていなかった私は、ファッション誌の特集に「男子はぶっちゃけどんなブラが好き⁉ 1位はなんと水色!」などと書いてあったのを頼りに、しばらく淡い水色の下着を買い続けていた。自分に似合うかどうかなんてまったくわからなかったし、いま思えばたぶん似合っていなかったと思う。

人生で初めて下着にときめいたときのことを覚えている。いつもどおり水色を買おうかとファッションビルのランジェリーショップに立ち寄ったとき、マネキンが装着していたブラジャーがすごく素敵で、輝いて見えた。それは深い赤だった。それまでの水色が急に軽薄に思え、これをつければ世界の真相に一歩踏みこめると錯覚するような、そういう出会いだった。この感覚をよく知っている気がして、ああ、恋だ、と思う。

これをつけるには未熟なんじゃないかとか、試着を申し出るのが恥ずかしいとか、そういう理由でモジモジして、すぐに買うことができずに帰宅したが、結局その下着が夢にまで出てくるものだから、翌日あらためて出向き、ドキドキしながら購入した覚えがある。試着はなんだか気が引けて断ってしまったので、家でひとりでつけてみる。しかし想像以上に似合っていた。

心ときめくものが体に似合うものなのではないだろうか、と最近よく考える。たしかに肌の色や体型との相性は存在するし、最近では「イエローベース/ブルーベース」や「骨格ストレート/ナチュラル/ウェーブ」などのタイプ分けの情報が行きわたり、身に着けるものを選ぶ指標になっている。買う前に試着してみてプロの意見を聞けばさらに客観的に、自分の体に合っているものがわかるだろう。でも、それがすべてだろうか、とも思うのだ。

ときめいてときめいてしかたがなくて、夢にまで見て買ったものは、どんなに客観的に似合うと言われているものとかけ離れていたとしても、必ず似合う。確たる根拠はないが、経験的にそうだ。自然と似合うものにときめくようになっているのかもしれないし、うれしい気持ちや自信が外見ににじみ出て輝くのかもしれない。私はとにかくときめきの力を信じている。

下着は必ず試着して買うべきだとか、なるべく高価なものを買うべきだとか、そういうのはもはや定説になっていて、特に異論もないのだけれど、そんなことはすべて無視してギャルブランドの1990円の下着を衝動買いしたいときもある。しかもそれが案外似合ったりするのでおもしろい。きっとその瞬間のときめきと、買いたいという欲望が、それをいいものにするのだと思う。

あの深い赤の下着に出会ってからというもの、下着を買うときの私の基準はずっと、「心がときめくか」という一点のみだ。機能性だとか客観的な理由は二の次である。視界に入った途端にハッと目が奪われ、心を高鳴らせるものだけが買うべきものだ。だから私の場合は、同じシリーズの色で迷うということはあまりない。色、フリルやレースなどの装飾の感じ、ストラップやホックの雰囲気を見て、「これだ」と確信するものだけを選ぶ。

ときめくものだけを買うことは、簡単なようでいて難しい。そのときの自分のコンディションがよくないと、素敵な下着があってもときめくことができない。だからやっぱり恋に似ていると思うのだ。常に恋できる自分でいる、ということは私の人生のテーマでもある。それは自分の感情の揺れ動きをいつも信じ、受容し、肯定するということ。意味や機能を超えて、バイブスに従って生きていれば、バイブスが私を生かしてくれる。

最近は「RAVIJOUR(ラヴィジュール)」というブランドにハマっている。ブランドステートメントのページを見てみると、

“身につけたとたん、からだの中から、ドキドキする。気分がアガる。そのきもちがさらに女性を輝かせる。まるで魔法のように”
“生き方までセクシーになるために。ほかの誰かのためじゃなく、私は私のために。セクシーは楽しまなきゃ、もったいない”

と書いてあり、まさに私がずっと考えていたことだった。

RAVIJOURのくすんだピンクのブラレットがあまりに可愛くて、じつは何カ月も画面を見ては買うかどうか悩んでいたのだが、今やっと通販で注文した。届くのが本当に楽しみで、お店で試着できなかったのは残念だけれど、絶対に、最高に似合うと思う。だって私がときめいたのだから。私を輝かせるのはきっと、言語化できる意味や機能よりも、私の気持ちなのだ。そういう魔法を信じている。

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恋をする瞬間はいつも何気ない。しようと思ってできるものではないし、しないぞと思ってしないでいられるものでもない。だから、ときめいてしまったらしかたがない。情動に身を任せ、いけるところまでいこう。ほかの誰かのためじゃなく、私は私のために。


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