プラトニックな濡れ場で見せる覚悟
金魚妻 そうした岩田のバージョンアップされた演技を踏まえた上で、いよいよ本人初の本格的な濡れ場を見てみるとどうだろう。
第7話まで見て、さくらと春斗のふたりがベッド上で肌を重ねて迎えた朝はわずか2回しか確認できない。浅はかな性愛に狂う動物的すぎる卓弥とは対照的に、そういうことの回数が少ないからと言って、彼らの不倫関係を「純愛」といって美化するつもりはない。むしろ、性愛を突き詰めていった先にやっとかすかに見つかるのがほんとうの愛の形だと思うからだ。
そもそも占い師メイが不倫妻たちに話して聞かせる、生まれた時に魂をふたつに分けたという「ツイン霊」という考え方が古代ギリシアの哲学者プラトンの著作『饗宴』に由来するもので、さくらと春斗の純愛が真にプラトニック・ラブであることをしっかり物語ってもいる。
ネタバレは避けたいが、最終話ではけじめをつけるようとするさくらと春斗が狂おしいまでの濡れ場を見せ、おあずけをくらっていた岩田のバックショット(岩ちゃんのお尻だ!)をここでついにまじまじと拝むことが出来る。彼のあられもない腰使いを見て、恥ずかしさを通り越して身悶えするように「岩ちゃん」と叫びたくなる。部屋の傍らで見守る金魚たちですらぽっかりと口を開いて目をまん丸くして事の次第を見守ろうとする。
岩田がこんなハレンチで、狂った果実みたいに素肌をさらけ出して体当たりで挑んだ濡れ場は、でも、ほんとうに美しい。その言葉に尽きると思う。ひとりのアーティストとして「未来図」を描いていく過程でもう彼を抑えるものは、おそらく何もない。カメラの前でこれだけの姿をさらけ出して見せたことを考えると、改めてそれがソロ活動にかけた並々ならない岩田の覚悟だったのではないかと思う。
<文/加賀谷健>
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