メロン100%の衝撃。
先日、果物ジュースについての衝撃的なニュースが話題になりました。
それは、2020年6月9日から2022年4月13日までの間にキリンビバレッジが発売していた「トロピカーナ 100% まるごと果実感 メロンテイスト」という果実ミックスジュースのこと。パッケージには「100% MELON TASTE(メロンテイスト)」、「厳選マスクメロン」など、原材料の多くがメロン果汁であるかのような記載がされていました。
ところが、実際にメロン果汁は2%という少量しか使われていなかったことが判明。2022年9月8日、消費者庁がキリンビバレッジに対し、景品表示法に違反するとして、再発防止などを命じる措置命令を出したのです。
この一連の報道を見聞きして、「ジュース、気をつけなきゃな……」と感じた方は少なくないでしょう。そこで、どうすればがっかりせずにおいしい健康的なジュースを選ぶことができるのか、改めて考えてみました。
その一つの答は、「100%」というキーワードだけに一喜一憂しないこと。そしてさらに失敗・後悔しないジュース選びをするために参考になる重要ポイントを3つ整理してみましたので、一つずつご紹介していきたいと思います。
◆1.栄養成分の数値が一定でないことがある
ジュースに期待する栄養素として人気なのが、ビタミンや食物繊維。ボトルに記載されている栄養成分表示をチェックしてみましょう。固定値ではなく「◯◯~◯◯」と幅を持たせて書かれているケースが少なくありません。
特に幅が大きい場合、過剰な期待を持たないほうが賢明です。ジュースだけで厳格な美容・ダイエットを実践しようとするのではなく、まずはジュースを選ぶ楽しさやおいしさを大切にしたほうがよいでしょう。
果汁飲料を冷静かつシビアに捉えてみた場合、どんなジュースであれ、大半の商品で確実に摂取できる栄養素は、糖質です。
◆2.ストレート果汁、無凍結、コールドプレスはおいしさの証
果実本来の味わいが活きたジュースを選びたいのであれば、「ストレートジュース」を目印に選ぶべきでしょう。
リーズナブルに売られているジュースの多くは、「濃縮還元」。これは原料となる果実を搾った後に果汁の水分を減らし、5~6倍に濃縮したペースト状にして冷凍などの方法で保存。ジュースをつくる際に、水分を加えて元の濃度に戻して作られるジュースのことですが、ストレートジュースと比較してみると味は一目瞭然。
さらにおいしさや栄養を追求したい場合は、コールドプレス製法(材料に熱を加えず、強い圧力をかけてすりつぶして搾るジュース)、無凍結(製造過程や輸送過程で冷凍しないこと)を選ぶと良いでしょう。
これらのジュースは常温保存ができない“要冷蔵タイプ”ですから、要冷蔵をチェックポイントとして覚えておくのも簡単で便利です。
◆3.低温殺菌、低温充填
3つ目は、殺菌方法。果汁は高温殺菌することで風味や栄養が失われてしまいます。
しかしながら食品衛生法においては65℃で10分間加熱するか、これと同等以上の殺菌をするように規定されています。これらを遵守しながら、なるべく低温にこだわっている商品を探せば、さらなる本格派ジュースに近づくでしょう。
ちなみにこのように製造方法にこだわったジュースは必ずしも100%果汁ではない場合があります。
以上のような観点をふまえてジュース選びをしてみると、1本(1食分)につき300円前後がひとつの基準になっていることがわかってきます。もちろん安いジュースにも別のメリットや強みがありますから、まずは自分が何にこだわるのか(味、栄養)をはっきりさせることが大事。
そして、いずれにせよ商品パッケージの表示を確認することは、ジュース選びの確かな第一歩につながります。確認してみて記載内容に違和感や疑問を感じる場合には、躊躇することなく問い合わせをするのが賢明です。
<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>
【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12