紅一点女子のシゴト流儀
この連載では、圧倒的に男性が多い職場で活躍する女性たちにフォーカス。ジェンダーによる「らしさ」の壁を乗り越えて、自分らしく働くヒントをお伝えします
自分に本当に向いている仕事って何だろう?――誰もが一度は考えたことがあるのでは?
しかし、いざ仕事の候補を絞るとき、「これは自分には向いていない」「女性がする仕事ではない」「安定していない」など、消去法で無難な道を選んでしまう人は少なくないはずだ。
そこで紹介したいのが、千葉県に本社を構える運送会社、田代運輸で働く福田さん(29歳)。彼女は、数少ない女性の大型トラックドライバーだ。
福田さんは大学在学中の22歳で第一子を出産し、現在はシングルマザー。「ドライバーの仕事は大変なこともありますけど、仕事は好きですね。とにかく楽しいんです」と屈託のない笑顔を見せる。
一見「子育てしながらでは働けないのでは」と思えるドライバーの仕事だが、福田さんはなぜ自分らしく、楽しく働ける仕事に巡り合えたのだろうか。
「運転が好き」で始めたドライバーが、自分の天職だった
福田さんの人生は、波乱万丈だ。大学在学中に結婚・出産を経験。卒業後は子育てに専念するも、数年後に離婚。一人で子どもを育てるため、25歳で初めて働きに出た。
それまでに経験した仕事といえば、学生時代の飲食店バイトのみ。子どもがいる状態で、社会人として初めて就職した。
最初の仕事に選んだのは、飲料メーカーの子会社の配送ドライバーだった。
「子どもを育てるためには働かなきゃいけないし、そもそも私が働いていないと保育園にも入れられない。すぐに働ける職場を探していたら、たまたま飲料メーカーで働いている親戚から話を聞いて。元々バイクや車の運転が好きだったので、とりあえずやってみようかなと思いました」
現在は大型免許やけん引免許を取得していることからも伺える通り、大の運転好きだという福田さん。
ドライブテクニックにはそれなりの自信もあり、男性社会といわれがちな配送・運送業界で働くことにもまったく抵抗はなかったという。
「昔から、女性ばかりのコミュニティーだと逆に気を使って疲れちゃうんですよ。人間関係のもめごとも苦手で。だから、職場に女性がいないとか、男社会だから……なんてことは、全然気にならなかったですね」
入社して約1年半が経った頃、せっかくなら大型免許を生かして、仕事で大型トラックに乗りたいと考え、別の運送会社へ転職。
そこで1年ほど働いた後、環境を変えるために田代運輸へ移った。三つの会社を渡り歩いているが、職種はすべてドライバーを貫いている。
「やっぱり運転が好きだから、仕事をしていて楽しいんですよね。飲料メーカーの子会社のときは、荷下ろしがかなりの力仕事で『女のやる仕事じゃない』なんていわれることもありましたけど、今はコンテナの輸送をしているので力仕事はありません。
とはいえ大型トレーラーの運転は難しいし、長距離を走るのも楽じゃない。簡単にできる仕事ではないですが、その分やりがいがあります」