きっと多くの人を救うだろう言葉
――後半といえば、人気YouTuberになったゆりちゃんが、サイン会で「(自分がやっていることは)時代を超えて残るものじゃないから、それはちょっと寂しい」と伝えた女子高校生に「残るものって、そんなに偉いんですか?」と言われるシーンがあります。あそこはすごくドキっとしたと同時に、観ているこちらも救われる気がしました。
岸井「私たちは映画という残るものを作っている立場ですが、私も台本を読んだときに、ハッとしました。それにゆりちゃんとして、あの言葉を投げかけられたのは本当に救われましたし、今お話しされたように、きっとたくさんの人を救うだろうと感じました。自分自身に照らし合わせて、どんなことにも変換できる言葉だと思う。言っている女子高生はあっけらかんと言っていて、でも芯をついているし、考えさせられるなと。あのシーンがあるからこそ、そのあとのシーンも輝くし、すごくいいシーンだと思います」
何かをきっかけにはぐれてしまった人たちに
――「誰かとはぐれてしまった人に観て欲しい」と岸井さんがコメントされているのを読んで、ステキだと思いました。最後にひと言お願いします。
岸井「どこかで間違えなければ、歯車が狂わなければ……。たぶんあのままふたりでYouTubeをやっていたとしたら全く有名にならなかっただろうし、途中で破綻していたとは思うんです。でもこんな風にお互いを傷つけることはなかった。きっと、世の中にもほかの世界線でならうまく行っただろう人たちがたくさんいて、でも人生はそんな風にできていて。『あのひと言がなかったら、まだ一緒に遊んでいたのに』という人が、誰にもひとりやふたりはいると思うんです。
はぐれちゃったかもしれないけど、はぐれたということは一時は近くにいたわけだし、さよならでもないはずだから。もしこの映画を観て、もう会えないかもしれないけれど、実際に連絡を取らなくてもいいけれど、その人のことを思い出して、少しでも後悔じゃない気持ちに変わればいいなって。だってすごく楽しかった時があったんだから。何かをきっかけにはぐれてしまった人たちに、この映画を通してひとときでも互いを思いあってもらえたらいいなと思います」
(C) 2022「神は見返りを求める」製作委員会
<撮影・文/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
提供・女子SPA!
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