2009年にドラマデビューを飾り、『パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~』、連続テレビ小説『まんぷく』、『恋せぬふたり』、映画『愛がなんだ』など、さまざまな作品で印象を残してきた岸井ゆきのさん。
各種配信サイトにて配信がスタートした映画『神は見返りを求める』では、どん底からのし上がっていくYouTuberのゆりちゃんを演じています。見返りを求めない男・田母神(ムロツヨシ)と彼に支えられた女・ゆりが、見返りを求める男と恩を仇で返す女へと変貌していく本作。「誰かとはぐれてしまった人に観て欲しい」と話す岸井さんに話を聞きました。
ポップなポスターからは想像もしない展開に
――最初、一切情報を入れずに、ポスターの印象だけで観たので衝撃でした。
岸井ゆきのさん(以下、岸井)「ですよね。ポップでキャッチ―なポスターから、まさかああなっていくなんて(笑)」
――ゆりちゃんの印象は笑顔いっぱいで可愛らしい前半と、田母神といがみ合っていく後半で変わっていきます。演じるのに難しい部分はありましたか?
岸井「この現場って、毎日ず~っと笑っていていい現場だったんです。」
気の置けない吉田組だからこその空気感がプラスに
――前半は分かりますが、後半シーンの撮影も含めてですか?
岸井「どのシーンもそうでした。私は『銀の匙』(2014)でも吉田恵輔監督(『ヒメアノ~ル』『空白』)とお仕事しているのですが、そのときのスタッフと変わっていなくて、同じ空気感。本当に楽しい現場でリラックスできました。その分というか、後半の撮影では『え、なに、私(ゆり)が悪いみたいじゃん!』と感じることが多くて。現場全体から、『田母神がかわいそう……』みたいな空気が伝わってくるんですよ」(※吉田監督の「よし」は土に口です)
――あはは。
岸井「でもゆりとしては、人気YouTuberとボディペインティングをやって注目を集めたあとに、田母神が喜んでくれなかったことが大きくて。『ああいうところが、あいつの悪いところ!』と思っているのに、みんなの空気が『こんな目にあわされる田母神って、かわいそう』みたいになってて。『え、私だけが悪いわけ?』と。その空気を全力で吸って、そのまま気持ちを生かしていました」
「うそでしょ!?」と驚いた監督からの指示
――成果が見事に出ていました。
岸井「後半、ゆりちゃんは田母神に対して常に反抗してるんですけど、根底には、最初にYouTubeチャンネルを一緒に作っていたときの楽しかった気持ちがあるんです。本当に楽しかったんです」
――そうした前半部分の撮影は、実際に初めのほうにしたのですか?
岸井「はい。色んな所に行って。巨大竹とんぼを飛ばしたり、足つぼバドミントンをしたり、一輪車でナポリタン食べたり。ふたりでの最初のシーンが、巨大竹とんぼを作るために木を削るシーンだったのですが、監督が『自由演技でやってみて。よーい、はい!』と。『うそでしょ!?』と思いましたけど、思い出した豆知識をしゃべったりして、すっごく楽しかったんです。だからこそ、『あんな日々があったのに』という悔しさが強くて。後半は「なんでこうなっちゃったんだろう」とずっと思ってました」