企業はいろいろな形で資産を保有していますが、経済の先行きが不透明な中、手元に現金を潤沢に持つ企業はこの状況を耐え抜きやすい傾向があると言えるでしょう。その理由は「キャッシュフロー」へのダメージが少ないからです。キャッシュをしっかりと保有することの意味と、私達に身近な“キャッシュリッチ”企業を紹介します。
キャッシュを潤沢に保有していることの意味
キャッシュフローとは、日本語では「現金収支」などと呼ばれ、企業活動によって“現金がどれだけ入り、どれだけ出ていくのか”という現金の流れのことを指します。
例えば、前期のキャッシュの残高に企業活動によるキャッシュの増加分を加え、そこから減額分を引いた残りが当期末のキャッシュ残高になります。このキャッシュ残高がプラスならばキャッシュフローはプラス、逆であればキャッシュフローはマイナスというわけです。
企業活動には営業活動のほかに投資活動も含まれますが、キャッシュフローがマイナスの状況が続いているにもかかわらず、資産売却や金融機関からの借り入れができなければ、倒産のリスクが高まります。現金が底をつくと、事業拡大ができないどころか、金融機関への返済や仕入れ先企業への支払いが滞ってしまうからです。
不況下においては一般的には企業の収益は下がります。そのため、キャッシュフローはマイナスになりやすくなりますが、もしその企業が潤沢なキャッシュを蓄えていれば、キャッシュフローがマイナスの状況を長く耐え抜くことが可能と言えるでしょう。
営業活動が停滞してキャッシュフローが著しく悪化しても、2年間耐え抜ける企業もあれば、半年しかもたない企業もあります。こうした差はキャッシュをいかに多く蓄えているかによって出てきます。
お金持ち企業ランキングベスト10
私達がよく知る大手企業の中にも、キャッシュが豊富な「キャッシュリッチ」な企業が存在します。
企業格付け会社のリスクモンスター株式会社が2019年7月に発表した第7回「金持ち企業ランキング」調査では、キャッシュリッチな企業がランキング化されて紹介されていますので、紐解いていきましょう。
ちなみにこの調査では、現預金から借入金や社債などを差し引いた金額(=ネットキャッシュ)で順位付けされています。つまり、この調査のタイミングで法人口座にあるお金というより、純粋な企業の預金額に着目したランキングです。
ランキングベスト10
経営再建を目指している「東芝」が首位という結果を、意外に感じる人もいるのではないでしょうか。東芝は自社のメモリ事業を売却したことによってキャッシュの積み上げに成功し、前回調査のベスト10外から一気に1位に踊り出ました。メモリ事業の売却によって、キャッシュフローを安定させたのです。
ただ東芝のようなケースはベスト10企業の中では例外的で、企業活動で得たキャッシュをこつこつと蓄積してきた企業が上位に多くランクインしています。そのため「任天堂」や「信越化学工業」は目立った事業売却などが無くても、上位の常連組となっています。
市場規模が拡大しているIT企業は?
トップ10には「創業から間もないけれど、名前はよく聞く」というような企業が見当たりませんね。例えば、近年になって市場規模が急速に拡大しているIT関連企業のネットキャッシュはどれくらいの規模なのでしょうか。
IT関連企業では、SNS運営やゲーム開発大手の「ミクシィ」が1,444億円、ネット広告大手の「サイバーエージェント」が913億円、ソーシャルゲーム大手の「グリー」が871億円と続いています。
ちなみに2019年売上高の前期実績では、ミクシィが1,440億円、サイバーエージェントが4,536億円、グリーが709億円となっています。
年間の売上高が多い企業が、必ずしもキャッシュリッチな企業ではないということは知っておきたいところです。