意外にシビアな「ツラい現実」が描かれるエピソード
そして、物語のメインに置かれているのは、ハウが長い旅の途中で出会う人々との交流のエピソード。そこには、東北大震災後に根強く残る問題、過疎化した地方都市のシャッター商店街、さらにはDV被害など、さまざまな社会問題も背景とした、切実な悩みが描かれている。
メインビジュアルのほんわかした印象と異なり、それぞれのエピソードが意外にシビアであり、時にははっきりと暴力も描かれることに賛否両論はあるかもしれない。だが、その「ツラい現実」をはっきりと描くことこそが、この『ハウ』でもっとも重要なことだとも言える。
人はどうしてもツラい現実に直面する、だけど、人のかけがえのないパートナーにもなり得る犬(あるいは誰かの行動)は、そのツラい現実にいる人を癒すことができるし、時には前向きな気持ちを後押ししてくれるかもしれない。それぞれのエピソードでのハウの行動は、普遍的な「現実にあり得る人生のきっかけ」だと思わせてくれるのだ。
田中圭がいない時も、ずっと頭の片隅に置ける
前述した通り、メインで描かれるのはハウの旅路であるため、「田中圭がいないシーンが多い」内容でもある。だが、その間にハウは一生懸命、彼に辿り着くための旅を続けていて、人々を癒していく。主人公の可哀想すぎる境遇を観てきたことに加え、田中圭が「放っておけない」存在感と魅力を持つこともあって、彼が画面に映っていない時でも、ハウは観客と同様に主人公の存在を常に頭の片隅に置けるような構図があるのだ。
そして、田中圭演じる主人公は少しずつ、長い時間をかけて、ハウがいない日々を受け入れていくことになる。観客はその長い時間の中でも、ハウが「いたこと」で人々を癒していく様を観ているので、ハウが「いなくても」前向きになろうと努力する彼のことも、相対的により愛おしい存在として映るのだ。
池田エライザの「変わり者」の同僚にも注目
その田中圭との心の距離を縮めていく同僚を、池田エライザが好演していることも重要だった。
田中圭は「点字ブロックの上に置かれた自転車をすべて移動させようとする」など、善人すぎてちょっと度も超えた(でも正しい)行動もしている。池田エライザ演じる同僚も職場では浮いた存在であり、彼女自身も悩みを抱えているからこそ、変わり者同士の2人はわかりあっていけたのだと、つぶさに感じさせるのだ。犬のハウ以上に池田エライザに自己を投影できる人は多いだろうし、2人が飲み屋で交わす言葉が金言になる人もきっといるだろう。
そして、結末はとても「優しい」と思えるものだった。これまでシビアな「ツラい現実」を描いてきたからこその説得力も担保された、感動的なラストまで、ぜひ見届けてほしい。
<文/ヒナタカ>
ヒナタカ
雑食系映画ライター。「ねとらぼ」や「cinemas PLUS」などで執筆中。ブログ 「カゲヒナタの映画レビューブログ」
Twitter:@HinatakaJeF
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