【プロフィール】
神崎龍志さん
10歳から14歳までを中国・北京で過ごし、後に東京外国語大学中国語学科へ進学。大学卒業後は銀行に就職し、同行を退職後、サイマルアカデミー同時通訳コースに入学。その後はフリーランス通訳者としてビジネス会議から学術分野、政治関係、国際会議など幅広い分野にて第一線で活躍。現在も放送通訳を中心に通訳者としてご活躍される一方、明海大学教授、サイマルアカデミー講師として通訳の指導にも取り組まれています。
渡邊:本日はインタビューをお引き受け頂き、ありがとうございます。実は私も中国語通訳者を目指しており、大学生の頃にサイマルアカデミーの体験授業に参加したのですが、私にとって初めてお会いした通訳者が神崎様でした。
神崎:本当ですか!?全く覚えてませんよ(笑)。
渡邊:ですよね(笑)。でも、本日このような形でまたお会いすることができて、本当に嬉しく思います。早速ですが、最近の通訳のお仕事はいかがでしょうか。
神崎:放送通訳がメインになりました。オンラインでの通訳をすることも時々ありますが、最近はフリーの頃のように数をこなしているという感じではありません。教育にシフトしてきたということはありますね。
渡邊:今回は通訳のお仕事についてだけでなく、通訳者を目指す上で必要な準備や勉強について、先生目線からのお話も伺えたらと思っております。まずは、通訳を教える上で難しい点はどこにあるのでしょうか。
神崎:教員の思い通りにはいかないということです。一人一人のセンスや勉強量などによって学生や受講生の伸び方は異なります。伸びが顕著な人もいれば、一生懸命やってもなかなか伸びない人もいる。そこには自習の仕方など様々な原因がありますから。私は日本語ネイティブなので日訳を教えるのが中心ですが、注目している点は日訳の質とリスニングのレベルです。どのくらい意訳をして、どのくらい聞きやすい日本語にできるかという部分にその人のセンスが出ます。そして、その大前提となるのが中国語のリスニング力。日本語はきれいだけど、リスニングのレベルがまだ低い段階にあるという人もいるので、この2点を中心に教えていきます。
渡邊:中国語のリスニングについてですが、有効な勉強方法はございますか。
神崎:最初は原稿のある教材がいいと思います。学習の初期段階であれば、まずは中国語のニュース原稿を自分で音読できるようにする。自分で発音できないと聞き取りもできませんから。リスニングの練習をする段階になったら、ある程度分野を絞った方がいいと思います。例えば、今ならロシア・ウクライナのニュースに限定して聞くことで、地名や固有名詞にも慣れていきます。関心のあるテーマや仕事に関係のある内容を題材にすれば、気持ち的にも入りやすいし、専門用語を含め日本語の語彙を知っている可能性も高いので、少し近道になるんじゃないでしょうか。
渡邊:ベテランの通訳者でも専門外の分野では聞き取れないことがあるのでしょうか。
神崎:それはあります。まずは単語が大事です。暗記はしなくてもいいですが、単語を整理して用語集を作った方がいいですね。初めての分野で通訳をする際には、どれだけ準備をしても分からない言葉が出てくる可能性があります。そういう時には、どんなベテランでもその分野では素人になるわけです。私がいつも失敗やミスを強調するのは、ベテランでもそういうものはある程度前提にして臨まないといけないと思っているからです。もちろん事前に調べつくすことも大事ですけど。