カラスの赤ちゃん
「そんなある日の朝、激しく鳴くカラスの声で目が覚めたんです。ベランダに出てみると、どうやら電柱に作られたカラスの巣から、赤ちゃんカラスが落ちてしまったようでした」
赤ちゃんカラスが道端をピョンピョン歩いている横を誰かが通りかかると、その頭を親カラスがスゴい声で鳴きながら攻撃したりと、一生懸命赤ちゃんカラスを守っていました。
「赤ちゃんカラスはまだ飛べないみたいだし、親カラスもずっと悲しそうに鳴いていて心配になりました。そしたら『うるせー声だな』とSが起きてきたので、今までの様子を説明したんです」
するとSさんからは非情なひと言が。
ブチ切れてしまう
加代子さんが赤ちゃんカラスを助けに行こうとするとSさんが「一生面倒見られないくせに手出しするな、どうせ可愛いのは今だけですぐに飽きちまうよ」と言い放ったそう。
「その瞬間『どの口がそんなこと言ってんだよ!中途半端に私に手を出してきて…責任とる気もないくせに』とSにブチ切れていたんですよね」
もうSさんはとっくに自分に飽きていると勘づいていた加代子さんは、赤ちゃんカラスに感情移入してしまい、その勢いで本心をぶち撒けました。
「Sは『最初から不倫って分かっているのに、何でそんなに重たくなるの?責任て何?ゾッとしたわ』と吐き捨てて出て行ってしまったけど、なぜかホッとしている自分がいました。ずっと別れる踏ん切りがつかずにいたので」
カラスの赤ちゃんを助けたい!
そして、カラスの赤ちゃんをどうにか助けたい加代子さんは警察に電話をして相談してみました。
「すぐに女性の警察官さんが来てくれて、様子を見てくれましたが『特に何もできない』と言われてしまいました。カラスの赤ちゃんに水をあげてみましたが飲まないし、とにかく心配で」
ちなみに親カラスは上空を飛び回り鳴き続けていましたが、なぜか加代子さんを襲うことはなかったそう。
「その日は酷く暑かったし、このまま死んでしまったらどうしよう?と辛い気持ちになっていたら…さっきまでピョンピョンと歩くことしかできなかった赤ちゃんカラスが、大きく羽ばたいて空に飛んで行ったんです」
まだ長い距離は飛べないようで、あちらこちらにとまって休みながらですが、やっと親カラスと合流できたのを見て加代子さんは泣いてしまいました。
「間一髪のところで、この子は自分自身の頑張りでピンチを乗り越えてたんだなとジンとしてしまって。私もくだらないことに時間を費やしてるヒマなんかないぞ、羽ばたかなくっちゃと力が湧いてきたんですよね」
その晩Sさんから着信がありましたが加代子さんは無視をして、二度と連絡をとっていないそうです。
<文・イラスト/鈴木詩子>
鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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