西島秀俊との絶妙なコントラスト

 杉野がここまではっきりと存在感を示し、画面上に浮き上がった作品は本作がはじめてではないだろうか。これには、最年長社員・小鳥智志を演じる西島秀俊の存在が一役買っている。功と小鳥が絶妙なコントラストとバランスを保つのだ。

 第1話終盤で、図書館で勉強する佐奈と小鳥が歓談しているところへ功がやってくる。功の前髪が走ってきた風でかきわけられる若々しい印象。気づいて立ち上がる小鳥の律儀な振る舞い。西島さんのこの誠実キャラの機敏な動きも素晴らしい。小鳥が深く会釈すると、今度はそれを受けた功がなんとも言えない表情を浮かべる。

 相手に密着するところは徹底的に密着し、受けとめる瞬間にはしっかり受ける。このメリハリが杉野の芝居をひときわ面白くする。西島秀俊の存在によってそれが引き立てられているのである。

軽やかな禁じ手を使った功

 ところで、気になるのは、「社内恋愛禁止」が掲げられているオフィスで、佐奈と功の関係性に変化はあるのかである。スタートアップ企業としてさらなる躍進を目指し、恋愛どころではない佐奈に対して、功は彼女への気持ちを胸のうちで募らせていく。小鳥の入社以来、佐奈が小鳥のことを好きなのではないかという疑念に功はやきもきする毎日だった。

 第3話の回想パートでは、起業前の佐奈と功が、学生ビジネスコンテストの本番前夜、ソファでキス寸前まで進展していた様子が描かれた。キスは未遂に終り、自分たちの関係性はあくまでビジネスパートナーだと、佐奈は言う。そこまできっぱり言われた功は、30歳まで彼女を作らないと固く誓ったのである。ビールを飲み過ぎて眠ってしまった佐奈をみて、抱きしめるか一瞬躊躇した功が、独り言のように寝ている彼女に30歳までのロマンスをとうとうと語る場面は、俳優・杉野遥亮の真骨頂だった。

 それからというもの、功はさり気ない優しさで佐奈を包み込み続ける。それが、企業後初参戦のビジネスコンテストによってついに実を結ぶというか、好きな人にはじめて好きと言うことができた第5話のラストにはしびれた。杉野君、功の積年の想いを何ともさりげない告白場面に仕上げってしまったのだから。オフィスに恋愛は禁止? いやいや、オフィスだからこそ結ばれるパートナーシップがいかに発展するのかを見守るほうが、健康的ではないだろうか?

 恋する気持ちにルールはない。軽やかな禁じ手使った功の次なる技あり場面に期待したい。

<文/加賀谷健>

加賀谷健
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。 ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu


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