今期最注目ドラマは、TBSで毎週火曜日よる10時から放送されている永野芽郁主演ドラマ『ユニコーンに乗って』で、決定である!
永野演じるヒロインを支える役どころを演じるのが、杉野遥亮だ。役柄自体がキャラクターとして魅力的なのだが、そこから滲む杉野の持ち味が毎話を追うごとに、どんどん発揮される。
「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、本作によって俳優として次のフェーズに突入した杉野とその役柄の魅力を伝える。
連ドラの“名門”TBS「火曜10時」
民放各局が、毎週放送のテレビドラマ視聴率を取るためのジャンルは大きく3つある。刑事(弁護士)、医療、そしてオフィス物(あとは、BLドラマを加えてもいい)。この三つの不動のジャンルに恋愛フレーバーを振りかけるかは、各ドラマのさじ加減なのだけれど、日常に身近なオフィス物はドラマ構成上フレキシブルに対応できる。そこに旬の若手俳優を起用すれば、手堅い視聴率が担保されるというわけだ。
今期は、その意味では上記ジャンルが網羅されているわけではないが、注目ドラマは多い。特に、『ユニコーンに乗って』と『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』(TBS系、毎週金曜日よる10時放送)のTBSドラマが、火曜日と金曜日に他局としのぎを削りながら、奮闘している。
2014年に開設されたTBS「火曜10時」枠は、今や連ドラの“名門”である。筆者は、昨年放送の火曜ドラマ『着飾る恋には理由があって』(2021年)から虜になった口だが、なぜTBSドラマがこれほど面白いかとはいえば、何より丁寧な画づくりである。きちんと計算された画面構成だからこそ、視聴者が安心して毎週、物語を受容できるのだ。今期の火曜ドラマである『ユニコーンに乗って』は、「火曜10時」の新たな代表作として、この夏またしても涼やかなイケメン俳優を送りこんできた。もちろん杉野遥亮である。
オフィス内の杉野君、ただ者ではない
新たなオフィス物といっていい本作では、杉野遥亮が絶対的なイケメンのポジションにある。オフィスに放たれた杉野君は、水を得た魚のようだ。彼の視線、一挙手一投足、会話、そのすべてをオフィスのセットに配置されたカメラがここしかないというベストなポジションで捉える。それがびっくりするくらい完璧なのだ。まるで杉野君のために、杉野君を魅力的に切り取ることだけを考え抜いたようなカメラポジションとアングルである。
例えば、第1話で、投資を受けている企業から経営方針について厳しい指摘を受けた「ドリームポニー」の若きCEO・成川佐奈(永野芽郁)がオフィスに帰ってくる場面。同僚たちにはうまくいったと話す佐奈の本音を、スタートアップメンバーである須崎功(杉野遥亮)は、一瞬で見抜き、彼女の元に駆け寄る。功はしゃがみ、座り込む佐奈と同じ目線になる。細かいところに相手への配慮を感じるこの爽やかさ!
「さっきの嘘だろ」と言って、彼女の髪を右耳にさりげなくかけてやる。相手の微動に合わせて彼も微動する。再び立ち上がるときにも相手のタイミングに合わせる。完璧なアングルのカメラがそれを丁寧にすくいあげる。杉野君のこういう細やかな演技にいちいち感動してしまった。オフィス内の杉野君、これはただ者ではない。
視線に感じる新たなフェーズ
杉野遥亮の演技の特徴は、基本的に相手に密着型であることだ。相手の反応を伺いながらそれに素直に反応してみせる。これは以前、『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系、2021年)で杉野が演じたヤンキー役に対して筆者が“ミラーリングの演技”だと指摘したことがある。今回の功役は、確かに同じ系譜のミラーリングであるのだけれど、そこからさらに一歩踏み込んでいる。
特に気になるのは、視線のわずかなゆれである。相手に照準を合わせながら、何か彼だけの世界を想像させるような視線のふるえを感じる。それでいて全体の印象として、相手をまじまじみつめる長身の姿がピタリと画面におさまる。なんだろう、この独特な存在感。彼が俳優としての新たなフェーズに入ったことを感じさせはしないか。