「乳がん」は治せるの?
皆さんも今のお話でちょっと怖くなったかもしれませんが、お乳にしこりを見つけたからといってあきらめないでください。私たちはまだまだ動物たちを助けてあげることができます。
現在、乳がんを根治するために最も有効な治療法といえば外科療法、つまり手術です。乳腺組織は孤立したひとつの臓器ですから、乳がんがその中にとどまっている状態なら、手術でそれを大きく取ってしまえぱがん細胞を身体の中から無くしてしまえるのです。そう、他のところに転移さえしていなければ「がん」は根治できる可能性が非常に高い病気なのです。
でも、転移してしまっていたら・・?
「じゃあ、もう転移してしまっていたら治療しても無駄なの?」ということになりますが、ここでがんに負けて動物を見捨てるわけにはいきません。まだまだ方法はあります。
がんの治療には、根治は無理でも緩和治療という概念があり、がん細胞の数をできるだけ減らした後にそれ以上細胞を増やさないようにしたり、それができないとしても細胞の増えるスピードを遅らせることによって生活の質の向上や延命を目的とする様々な治療があります。
例えぱ乳腺にある大きなしこりのジクジクした化膿病巣は手術で切除すれぱスッキリときれいになるので今後の細菌感染などに悩まされずに済みますし、がん細胞の数も減るので悪液質の状態もある程度改善でき、動物は非常にいい生活の質を保てるのです。そして残ったがん細胞に対しては、抗がん剤などの薬でがん細胞を壊していき、がんの増殖を遅くさせるというわけです。
しかし、この薬の治療で大切なことは、この緩和治療の目的は生活の質を向上させることが第一であって、決して延命を一番に考えているわけではないということです。すなわち、抗がん剤を副作用が強くでるほど大量に使えぱ確かに長生きはでき ますが、それでは毎日を生きていくのが大変つらくなります。このような治療のために動物たちの生活が乱れることはどうしても避けなければいけません。
私たち獣医師は、動物たちが毎日楽しく生活するための手助けをすることが最も大切な役目なのです。
以上のように、獣医学はここ10年で飛躍的に進歩し、がんについても様々な治療ができるようになってきています。まだまだ数が少ないのが実情ですが、先述の外科療法に加えて放射線療法や化学療法など、人間の医学と変わらないほどの治療がおこなえる病院ができてきています。
しかし、それでもがんは獣医師だけで治せるものではありません。動物たちを一番よく知っている飼い主である皆さんと協力して、動物たちの生活を守っていかねぱならないのです。どうか私たちに皆さんの力を貸してください。
犬・猫と人間との年齢換算表
犬・猫 | 人間の年齢 | 犬・猫 | 人間の年齢 |
1ヶ月 | 1才位 | 6年 | 40才 |
2ヶ月 | 3才 | 7年 | 44才 |
3ヶ月 | 5才 | 8年 | 48才 |
6ヶ月 | 9才 | 9年 | 52才 |
9ヶ月 | 13才 | 10年 | 56才 |
1年 | 18才 | 11年 | 60才 |
1年半 | 20才 | 12年 | 64才 |
2年 | 24才 | 13年 | 68才 |
3年 | 28才 | 14年 | 72才 |
4年 | 32才 | 15年 | 76才 |
5年 | 36才 | 16年 | 80才 |
「乳がん」を見つけるためには?
さあ、乳がんを治せるうちに見つけてください。
ご存知のように犬や猫の乳腺(乳房)は左右両側に4~5対あり、それぞれがつな がって、わきの下から足の付け根まで長くのびています。人間のように1対ではありません。したがって、胸からおなかにかけた全部の部分が腫瘍の発生可能な場所ということになります。
7歳を越えれぱ少なくとも1カ月に1回は乳腺を触ってみて、もしどこかにしこりを見つけたならすぐに獣医さんの診察を受けてください。できるだけ小さいうちに治療ができれば根治の可能性が非常に高くなります。また、数年前からあったしこりが突然大きくなり始めることがあります。これは今まで良性腫瘍だったしこりにがんが発生した可能性が考えられますので、この変化を見逃さないで私たちにみせて下さい。
あなたの愛する動物の命のカギを握っているのは、あなた自身なのです。
提供・犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)
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