2大高級車メーカー、メルセデスベンツとBMWは、SUV以外のセダンやクーペ、コンパクトカーなどは、2018年の売上が半分に落ち込むと予想している。
米国市場におけるSUVおよびクロスオーバー人気を受け、長年にわたる「伝統の高級セダン」を看板にかかげた戦略から、市場の需要に応えたSUVに比重を置いた戦略への移行をはかっているが、セダンからの移行に対する葛藤はあるようだ。
2017年の高級車の売上高を見てみると、既に58%(前年比3ポイント増)をSUVとクロスオーバーが占めており、メルセデスとBMWは高級SUVでトップの売上を誇る。
Sクラスの昨年の売上は2006年の半分、7シリーズは昨年から3割減
ダイムラーの報告によると、2017年は世界中で230万台(前年比9.9%増)を売り上げ、7年連続で記録更新を達成したメルセデス・ベンツ。しかし米国での総体的な売上高4.5%減。同ブランドを代表するSクラスの昨年の売上高は16%減で1.6万台に手が届かず、2006年と比較すると半分の水準にまで落ち込んでいる(オートモーティブ・ニュース2018年2月18日付記事)。BMWは総体的な売上高が5.5%減、7シリーズは28%も数字を落とした。
対照的に両ブランドともSUVの売上高は3.3%増、1.9%増と着実に成長している。メルセデスの米国の売上の49%、BMWは44%がSUVだった。
米国を中心に加熱するSUV人気が、両ブランドの売上に貢献したことは疑う余地がない。昨年米国で売れた車の42%はSUVおよびクロスオーバーだったというから、その加熱ぶりは相当のものだ。トヨタRAV4や日産ローグ 、ホンダCR-Vなど日本ブランドの人気が高く、それをフォード・エクスプローラー、ジープ・グランドチェロキーが追うといった感じだ。レガシィ アウトバックやフォレスター、現代自動車サンタフェ、マツダ CX-5などの需要も高い(GoodCarBadCar.net 2018年1月5日データ)。
「伝統」を上回るSUV人気に戸惑いを隠せない?
天下の高級車ブランドとはいえ、こうした市場の大きな変化を無視するわけにはいかない。メルセデス・ベンツはGLクラスやMクラス、BMWはXシリーズを投入しており、近年は人気のコンパクトSUVにも力を入れている。しかし伝統的なセダンへの未練は断ち切れないようだ。
自動車価格情報サイトを運営するケリー・ブルー・ブックのエクゼクティブ・アナリスト、レベッカ・リンドランド氏いわく、両ブランドが考える「主力」はあくまでSクラスや7シリースなどのセダンであり、それを追い越すSUVの勢いに抵抗を禁じ得ないはずだという。
実際、メルセデスベンツUSAのディートマー・エクスラーCEOはSUV人気を認める一方で、「メルセデスベンツには、ほかにも非常に根強い人気を誇る素晴らしい車種がある事実を忘れてほしくない」とコメントしている。またBMW北米のベルンハルト・クーントCEOも「SUVと通常車の需要のバランスをとるのが難しい」と戸惑いを隠せない様子だ。