山﨑賢人が発動する突破力
山﨑の演技上、前作との大きな違いは何か? それは戦場の最前線にいる信が歩兵隊から騎馬隊に編隊したことである。秦国総大将・ひょう公(豊川悦司)が伝令をだし、騎馬隊が総突撃を開始した場面の壮大さは、日本映画界の巨匠・黒澤明監督作品を彷彿とさせるダイナミックな映画的情動を確かにうねらせている。でもそれより何より、多勢に無勢であるはずの信が歩兵としてはただ一人馬上にあることが感動的なのだ。
いや、感動以上だ。仲間たちに背中を押され、馬を走らせる信の表情には、言いしれぬ色気がある。官能とかそういうのではない。馬上の山﨑が発動するのは、本作を今年の邦画No.1作品に押し上げようとする突破力だ。画面上の山﨑にはそんな特別な力が身体中から、みなぎっていたように思う。
砂埃の間に垣間みせる微笑み
前作で馬上の華を担っていたのは、間違いなく吉沢亮だった。今回ばかりは軍配は完全に山﨑に上がる。見せ場は俺のものだと言わんばかりの勢いで、自軍の総大将を追い抜き、馬を走らせる。カメラはドリーの横移動でへばりつくように並走する。これこそ映画だ。映画はダイナミックでなければいけない。そしてそれに相応しい映画俳優こそ、山﨑賢人だ。
馬上から今度は敵戦車に飛び移る。乗り捨てた馬はその場にステイ。ところが馬は、信の元からは離れない。このさりげない瞬間をどうか見逃さないでほしい。信の計略によって彼が再び馬上に戻るとき、舞い上がる砂埃の間に垣間みせる山﨑の微笑みが忘れがたい。
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<文/加賀谷健>
加賀谷健 音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。 ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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