スピード結婚したが…
そこからわずか3ヶ月でプロポーズ、さらにその半年後には結婚生活へと突入していった。まさにスピード結婚。友人からは心配されたが、「彼は誠実で実直でユーモアもある素敵な人」とサチさんは胸を張った。
2時間ほどかけて彼の実家に挨拶に行くと、両親が大歓迎してくれた。近くに住む妹一家も訪ねてきてにぎやかだった。彼は愛されて育ってきたんだと実感したという。
一方のサチさんはすでに両親がいない。弟がいるが絶縁状態、行き来のある親戚もいない。それを慮(おもんばか)って、彼は結婚式はやめようと言ってくれた。友人たちを呼んでのパーティくらいしたいとサチさんは思ったが、彼は「きみさえいればいい。早く結婚生活を始めて友人たちを少しずつ呼べばいい」と言ったので同意した。
結婚生活は楽しかった。毎日、彼の新たな魅力を発見した。共働きだったが、彼は「家事は苦手だけど料理は得意」と、冷蔵庫を見てささっとおいしいものを作ってくれる。サチさんは掃除洗濯は苦にならない。私たちはいいコンビだねと笑い合った。
新婚わずか2ヶ月で……
ところがわずか3ヶ月もたたないうち、サチさんは夫に対して疑問がわいてきたという。きっかけは結婚して1ヶ月たった週末、「ちょっと実家に行ってくる」と彼が言い出したこと。
「そのときは母の具合が悪いらしいという話だったんです。一緒に行こうかというと、いいと言われて。それから毎週末の土曜日、朝から実家に行って夜まで帰ってこない。それが1ヶ月以上続いたころ、なんだかおかしいなと。
結婚しても自分の実家については気にしなくていいと言われていたので電話もかけたことがなかったんですが、ある日の夜、かけてみたんです。そうしたら義母が元気に電話に出た。おかげんいかがですかと言ったら、一瞬の間があって、『ちょっとね、腰を痛めてしまって。あまり動けないのよ』って。
ただ、私は覚えていたんです。電話が玄関先にあったことを。おかしいなと思いました」
週末、夫がそろそろ実家に着いたころを見計らって、また電話をかけてみた。すると義母が「さっき来たんだけど、今、買い物にでかけてくれている」と言う。「携帯にかけたらどうかしら」と言われ、ますます不信感が強くなった。
遅くに帰宅した夫に、「何を隠しているの」とストレートに尋ねた。
すると夫は「ごめん。やっぱりうまくいかないよね、こういうの。疲れた」と苦笑いした。