また電車の中に置いてきちゃった……。そう、傘です。『「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方』著者の宇都出雅巳さんが、傘を忘れてしまう原因と対策をご紹介します。
「あれ? 忘れてた……」
仕事をはじめ日常でよく起こる「もの忘れ」や「ど忘れ」。
記憶力の悪さや歳のせいにしがちですが、実はそうではありません。
「あれ? 忘れてた……」がなぜ起こるのか? どうやればそれが防げるのかを、『「名前が出ない」がピタッとなくなる覚え方』や『仕事のミスが絶対なくなる頭の使い方』など、記憶に関する著作が多くある、記憶の専門家・宇都出雅巳さんに解説していただきます。
これまでの記事はこちら。
ビジネスシーンで名前を忘れない方法
パスワードを忘れない簡単な方法
有名人の名前を忘れてしまう原因と対策
用事をうっかり忘れない簡単な方法
忘れると怒られる!記念日や誕生日を覚えておく簡単な方法
六回目となる今回取り上げるのは、忘れ物の代表ともいえる「傘」。あなたも一度は忘れたことがあるのではないでしょうか?
ちなみに、2015年に警視庁・遺失物センターに届けられた傘は何と43万本だとか……。数ある忘れ物のなかでも傘はダントツで一番です。人はなぜ傘を忘れるのでしょうか? どうすれば忘れないのでしょう? 今回は傘を忘れる原因と対策を解説します。
記憶力の問題ではなく必要を感じるかどうか?
「灯りの消し忘れはあるけれど、つけ忘れはない」。
あたりまえともいえますが、なぜ「つけ忘れ」しないのか? ちょっと立ち止まって考えてみましょう。それは灯りをつけないと困るからですね。つまり必要をすぐに感じるから忘れないのです。一方、消すほうは、もう部屋からいなくなるわけですから、消す必要は感じません。このため、「つけ忘れ」はなくても「消し忘れ」は起こるのです。
傘もこれと同じです。記憶力がいい・悪いの問題ではなく、必要を感じるかどうかなのです。たとえば、電車から降りるとき、降りたホームに屋根がなくてザーザー降っていれば、だれも傘を忘れる人はいません。傘がなければ濡れてしまいますからね。
ところが、雨がまだ降っていない、もしくは止んだ、さらには地下鉄のホームや、大きな屋根付きのホームなら、傘はすぐに必要ありませんから、忘れてしまうのです。まずは、必要性の有無が忘れるかどうかに大きく影響することを押さえておきましょう。
すぐに消える「脳のメモ帳」に頼らず、「傘でメモ」せよ!
では、必要性がなくなった状況でも、いかに傘のことを忘れないか?
「傘を忘れないように」とがんばって覚えようとしても、あまり頼りにならないことは、第四回目の記事「ついでにやろうとしていたのに……」用事をうっかり忘れない簡単な方法」を読まれた方はおわかりですよね?
そうです、「覚えているようで、実は覚えていない記憶」=ワーキングメモリに頼ることになるからです。このワーキングメモリは「脳のメモ帳」にたとえられますが、すぐに覚えられる反面、その容量は小さく、新しいことに気をとられるとすぐに忘れてしまいます。
たとえば、電車に乗ったときに、手すりに傘をかけて「忘れないように」と「脳のメモ帳」=ワーキングメモリにメモしたとしても、週刊誌の中吊り広告に気をとられて読み始めると、それがワーキングメモリに書き込まれ、傘に関するメモは弾き出されてしまいます。そして、降車駅に着いて「あ、降りなきゃ」と思うときには、「脳のメモ帳」には傘のことが書かれておらず、忘れてしまう危険があるのです。
なので、消える可能性のある「脳のメモ帳」には頼らずに、実際にメモしておくことが確実です。ただ、手のひらや手の甲に「傘」なんて書いてメモするのはやめたいですよね。
そこでおすすめなのが「傘でメモ」すること。どういうことかというと、降りるときに否応なしに傘のことを思い出すようにするのです。たとえば、手すりにかけた傘にカバンのヒモを引っかけておくだけでも、立ったときに傘に意識がいきますから確実に思い出せます。「脳のメモ帳」を過信せず、ほんの少し、こういった工夫をすることで傘の置き忘れは激減します。
安物の傘ではなく高級傘を買う
最後にちょっとした投資で置き忘れをなくす方法をご紹介しましょう。
それは、万が一忘れたときに、「しまった!!!!」と激しく後悔するような高級な傘を買うのです。
傘を置き忘れてしまうのは、「どうせ忘れるから」と安物の傘を使っていることも原因の一つです。自分にとって重要ではないので、意識が向かずに忘れやすくなるのです。
そして、忘れるから安物の傘を買う、安物だから意識が向かずに忘れる、忘れるから安物の傘を買う……という悪循環に入ってしまいます。
この悪循環を断ち切るには、思いきって高級な傘を買うことです。自分のお気に入りの傘を時間をかけて選んで買うといいでしょう。
そうすれば、これまでよりも傘に意識が向きますから、頻繁にワーキングメモリに呼び出されるようになりますし、忘れないようにカバンのヒモを引っかけておくといった工夫も厭わずするようになり、置き忘れることはなくなるでしょう。
安物の傘とはいえ、何回も忘れて買っていてはお金もバカになりません。いい物を買って大事に使う。結局はこれが「あ! 忘れた!」をなくし、お金も節約する近道なのです。
次回も日常でよく起こる「あれ? 忘れた?」の具体的ケースを取り上げ、記憶の正体と忘れないためのコツをご紹介します。お楽しみに!
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