園長先生の反応が変わった瞬間
押しの強い義母と夫に迫られて、園長先生もさぞ困ったことだろうと思いましたが、そこはさすが大ベテラン。2人によると、最初は話を聞きつつも、うまくかわしていたといいます。
その潮目が変わったのは、義母が難病手帳を見せたこと。義母は持病をいくつか抱えていて、難病指定も受けているのです。手帳を見せながらそのことを伝え、「自分が病気持ちでなければ、孫の世話もできるのですが…」と話したことで、園長先生の反応が変わったそうです。そして義母の話を聞いて、保育の必要性があると判断した園長先生は、園を経営する本部へかけあってくださることに。
その認証保育所は、区の認可保育園と違い、親の勤務状況によって決められたポイントだけではなく、家庭ごとの事情も考慮して選考していました。うちの息子の場合も、私の就業証明書と義母の難病手帳のコピーを提出した後、本部のほうで審査が行われ、最終的に入園が認められました。
ただ義母や夫から色々聞かされていた園長先生は、入園後も私や家庭の状況を心配していたようです。だから「お宅、大丈夫?」とやたら声をかけられていたわけですね。その園長先生も、だいぶ後になって「お義母さま、何度も頼みにいらっしゃったのよ~」と笑いながら話してくださいました。
推奨できる方法ではないけれど、“おせっかい”に救われたのも確か
いま思えば、家で育児をしながら仕事をしていた日々は、心身ともに消耗していました。常に体調が悪く、人と話すことも億劫(おっくう)になっていました。けれども、その当時は自分が追い込まれていることに気が付いていませんでした。義母や夫の行動はかなり強引で、推奨されるものではありませんが、もしあのままの生活を続けていれば、幼い息子にも悪影響が及んでいたかもしれません。
近年、児童虐待のニュースが後を絶ちませんが、子供たちにまつわる悲しい事件が報じられると、母親に非難の声が集中しがちです。私も子供の母親として、事件に怒りを感じることもあります。その一方で、子供の父親や祖父母、親戚など、周囲にいる他の誰かが行動を起こせば、場合によっては救えた可能性もあるのではとも思うのです。
「おせっかいババアってよく言われるのよ」。義母はこう自虐気味に話すのですが、誰かのちょっとしたおせっかいが、結果的に子供や母親を救うこともあるとつくづく感じた出来事です。
―「義実家エピソード」―
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<文/青山文> 青山文
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