海水浴にキャンプ、プールにラジオ体操など、夏休みにたくさんの思い出がある方は多いのではないでしょうか。そんな夏休みを舞台にしたノスタルジックな映画を、邦画、洋画、アニメーションとジャンル別に厳選しました。映画の世界に身を置いてしばし日常を忘れ、ノスタルジックな気分に満たされてください。
夏休みをノスタルジックに描いたおすすめ映画【邦画】
しみじみと郷愁を誘う日本の風景と共に描かれた、とある夏休みをテーマにした邦画をご紹介します。映像の中に溢れる少年少女の頃見聞きした懐かしい風景や音が、日々の忙しさやストレスを洗い流してくれるでしょう。
毎日が刺激的で、いろいろなことに挑戦し、ドキドキワクワクがいっぱいだったあの頃の甘酸っぱい気持ちを思い出しながら観たい映画です。
夏のノスタルジック映画①菊次郎の夏
「菊次郎の夏」は1999年に公開された北野武監督の映画です。第52回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式参加した作品でもあります。
幼くして父親を亡くし、祖母とふたり浅草に暮らす小学校3年生の正男は退屈な夏休みを過ごしていました。遠くの街に暮らす母に会いに行こうと思い立った正男に、近所のおばちゃんが夫で遊び人の菊次郎を同行させてくれると言ってきます。
愛知県豊橋市を目指す正男と菊次郎ですが、道中菊次郎は競輪場で旅費も正男の小遣いも使い果たしそうになったり、ヒッチハイクでトラブルになったりとドタバタの旅となってしまいます。
そんな中正男が変質者に襲われそうになり、菊次郎が助けたことで初めて菊次郎に正男に対する情が芽生えます。
やがて正男の母の住む家を見つけたのですが、そこにはすでに新しい家族が生活していました。幸せそうな一家を見て陰で悲しむ正男を精一杯慰める菊次郎の姿に優しさを感じます。
実は自分も母親と別れた過去を持つ菊次郎は、老人ホームを訪ねるも自分もまた、母親に声をかけることはできなかったのです。ふたり共に夏の旅を終え、それぞれに成長して何かが変わっていく様に心打たれる作品です。
夏のノスタルジック映画②私たちのハァハァ
「私たちのハァハァ」は2015年に公開された、北九州から遥か1000キロ先の東京へ自転車で向かう4人の女子高生が主役の青春ロードムービーです。
4人が大好きなロックバンド、クリープハイプのメンバーが地元ライブの出待ちで軽く声掛けしてくれた「東京のライブにもぜひ来てください」というセールストークを真に受けて東京行きを決意します。
無謀にも自転車で東京目指して走り出した4人、旅のはじめは大好きなロックバンドのファンという繋がりで構成されていた4人組ですが、次第にファン熱の差が顕著になり衝突が始まります。
イマドキの高校生らしく4人は自分たちの行動をツイッターにアップしながら自転車を漕ぎ進めますが、だんだんと体力を奪われ、自転車を捨てヒッチハイクで東京を目指します。しかし、疲れからさらにいざこざを繰り返すようになるのです。
4人それぞれの感情が交錯して、悩んで衝突し、みんなが少しずつ少しずつ成長していく姿は、若い頃ならではの無謀さや熱い情熱はいつの時代も変わらないことや、自分自身の高校生時代を懐かしく切なく思い起こさせてくれます。
夏のノスタルジック映画③大人ドロップ
「大人ドロップ」は2014年に公開された、樋口直哉の小説が原作の映画です。この映画に10代の若者はもちろん等身大の共感を覚えるでしょう。また、過去10代だった大人が青春を振り返ってその頃の空気感をいっとき思い起こすのにぴったりな青春映画です。
静岡の高校生の由は、友人の始から杏への告白の手伝いを頼まれ、仲の良い春も加えた4人のダブルデートに誘います。しかし小さないさかいが起きてしまい、デートは失敗、由は杏と気まずいまま夏休みに入ってしまいます。
杏は夏休みが終わる前に高校を辞めて引っ越してしまい、由は少ない情報だけを頼りに彼女を探し再会できましたが、結局は好きだという本心を告白できませんでした。このとき一緒に食べた杏が好きな肝油ドロップが映画のタイトルになっています。
大人とも子供ともつかない揺れる男女4人の高校生が、その年代ならではの変化に富んだ関係性の中でもがき苦しんで成長していきます。
そんな様子を見ると大人となった今、なにも分かっていなかったあの頃がとても愛しく大切な思い出として心によみがえってくる、そんな作品となっています。
夏のノスタルジック映画④1999年の夏休み
森と湖に囲まれた全寮制の学校に学ぶ4人の美少年の愛と葛藤を描いた作品です。1998年に公開されました。原作は萩尾望都の漫画、「ト―マの心臓」です。
幼い愛を拒まれてしまったひとりの少年が湖に身を投げて自殺してしまいます。そして、夏休みに寮に残っていた残りの3人の前に、自殺したその少年とそっくりな別の少年が現れるのです。
この作品は少年同士の愛がテーマとなっていますが、当時はボーイズラブや、LGBT映画という分野は確立されていませんでした。
少年同士の愛を描くにあたり少年役を当時10代の少女だった女優たちが演じ、終始美しく幻想的な風景や音楽に乗せて描くことで、当時の邦画の新時代を切り開いた作品とも言われています。