「メロ夜」で語られる絶対的レジェンドたちの固有名詞

 先日、音楽プロデューサー松尾潔がホストを務めるラジオ番組「松尾潔のメロウな夜」(NHK-FM、通称:「メロ夜」)に今市が初ゲスト登場した。冒頭で今市がセレクトしたアーティストを紹介された。ホイットニー・ヒューストン、ボーイズⅡメン、ブライアン・マックナイト、モニカ。でるわでるわ、90’s R&Bの絶対的レジェンドたちの固有名詞。

 特に今市のルーツを語る上で欠かせないのが、ブライアン・マックナイトだ。渡米した今市が、マックナイトの自宅に2ヶ月間ホームステイした有名なエピソードがオンエアでも回想されていた。

 2018年のソロデビュー後、初のアルバム『LIGHT>DARKNESS』には、マックナイトとの共作曲を2曲(「LOVE HURTS」と「Thank you」)収録。初ソロツアーの埼玉公演では、アンコールにマックナイトが特別ゲスト登場し、ふたりで分かち合うようにしてマックナイトの「Back At One」(2001年リリース)を熱唱した。同アルバムの他の収録曲「Diamond Dance」と「ONE DAY」の2曲もR&Bファンにはたまらないナンバー。

 そして何を隠そう、「三代目JSB」のデビューシングル「Best Friends’s Girl」を手掛けたのが、今市が2010年に挑戦した「VOCAL BATTLE AUDITION」で審査員を務め、これまで彼の成長を見守ってきた松尾だった。ブラックミュージックを専門とする音楽ライターとしての深い造詣から、「お箸の国のR&B」を標榜し、日本におけるR&Bシーンを牽引してきた立役者だ。そんな恩師との90’s R&B談義が、「メロ夜」トークとして盛り上がらないはずがないじゃないか!

ラジオ・パーソナリティとしてのトレンド感

 一方、世界のミュージック・シーンの動向にアンテナを張ることも忘れてはいないのが、今市の幅広さ。10周年アニバーサリーイヤーだった「三代目JSB」グループとしても、ソロ活動としても活動自粛を余儀なくされたコロナ禍の2021年は、バラエティに富んだ新譜に触れ、トレンド感をアップデートするのに絶好の機会だったはず。

 今市が木曜日パーソナリティを担当する『SPARK』(J-WAVE)の2021年11月4日オンエアでは、好きなアルバムを紹介するコーナー「RYUJI’S FAVORITE ALBUM」で、エルトン・ジョンがロックダウン中に発表した『Lockdown Sessions』(2021年10月22日リリース)を取り上げている。スティーヴィー・ワンダーなどビッグ・アーティストが参加した同アルバムで今市が注目したのが、エルトンがチャーリー・プースと共作した美しいバラード曲「After All」。

 直接的な影響が認められるわけではないけれど、マーヴィン・ゲイを信奉するチャーリー・プースのメロディアスなバラードナンバーが、今市本人の胸にも響いたのは、音楽体験としてかけがえのない事実。ラジオ・パーソナリティとしてのトレンド感を垣間見せる今市は、何よりも音楽を愛する人なのだと思う。