『それでも愛を誓いますか?』相手を思うほど本音を言えない

 35歳の主人公・純は、4歳年上の武頼と結婚して8年目、セックスレスになって5年が経過している。子どもはまだいない。武頼は大手ゼネコンに勤め、多忙な日々を送る。

一度は専業主婦になった純だが、「夫に養ってもらっている」ことに引け目を覚え、再就職を決意するも、一度、専業主婦になるとそう簡単に就職先は見つからない。ようやく派遣社員として仕事をするようになるが、夫は「無理して働かなくても、オレが養ってやるから」と言う。  

この言葉、ありがたいと思う女性もいるかもしれないが、現代では複雑な思いを抱く女性も多いだろう。老人施設にいる純の母についても、武頼は温かく接してくれるのだが、夫の行動をありがたいと思えば思うほど純の本音は「なぜセックスしてくれないの?」につながっていく。

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(画像=『女子SPA!』より引用)

萩原ケイク『それでも愛を誓いますか?デジタル版:1』 (双葉社)

 一方の武頼にも事情はありそうだ。幼い頃に虐待家庭に育ったらしいトラウマ、「いい父親になりたいからこそ、子どもを持つのが怖い」こと、そしてがんばっている妻への引け目もある。「妻は本当は料理が得意じゃないし好きでもない」と夫は見抜いている。だが、それを妻には言えない。  

お互いに相手を追い詰めてはいけないと思うからこそ、本音を言えずにギクシャクしていくのだ。  

そんなとき、純は夫が外で女性と子どもと一緒にいる姿を目撃してしまう。それも夫には言えないままだ。純もまた、再就職した会社でともに仕事をする一回り下の篤郎のことが徐々に気になっていく。  

セックスレスだから不倫をするとは限らない。不倫をする人は、夫婦仲がうまくいっていてもするものだし、「愛妻家を自他ともに認める男性」であっても不倫することはある。  

一般的に言って、夫婦間のセックスレスというのは何が問題なのだろうか。